アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 765

(スコップは事件発生から十日後の五月十一に発見された。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用)

【公判調書2393丁〜】

                    「第四十七回公判調書(供述)」

証人=清水利一

                                            *

石田弁護人=「じゃ、こうお伺いしましょう。石田豚屋のスコップが無くなったということが本当かどうかを確かめるための捜査をあなたはしたことがありませんか」

証人=「部下にやらした、私のところにいる捜査員にそういう風にやらしたかも知れません」

石田弁護人=「あなた自身としてはないですか」

証人=「私はないです。まあ、指示下命事項といいますか、この点をやってくれということは毎日言いますけれども、自分で直接という捜査は中々出来ないものです」

石田弁護人=「ただスコップが本当に盗まれているか盗まれていないかということは、やはり捜査本部としてもかなり重大な関心があったんだろうと思うんですけれども、あなた自身はとにかく、直接は捜査されていないと。部下がしたということですか」

証人=「スコップの点についてはそうですね」

石田弁護人=「その部下にやらしたスコップに関する捜査、盗難されたかどうかという点についての捜査は事件の直後に終わったんでしょうか、事件の終末近くまで続けられたんでしょうか。つまり事件の終末というか、六月の末頃までずっと続けられていたのか、五月のうちに打ち切られたんでしょうか」

証人=「スコップはその後どこかで発見されたようにも覚えているんですがね」

石田弁護人=「麦畑か何かでスコップが発見されたということですか」

証人=「はい、発見されております」

石田弁護人=「石田豚屋のスコップが無くなっているということは記憶にありますか」

証人=「あります。捜査員からの報告で知っております」

石田弁護人=「その石田豚屋の無くなったスコップが、死体発見現場付近から発見されたスコップと同じスコップか違うのか、という点を捜査された記憶はあるのですか」

証人=「捜査員に刑事部長直命でやったかどうか私も知っておりませんが、捜査をしたことは間違いありませんし、石田豚屋の物であるというような証言が得られたように私は記憶しております」

石田弁護人=「その証言が得られたと言うんですけれども、証言だけで早飲み込みするということも捜査にとっては不適切なことで、果たして石田豚屋の無くなったというスコップなのかどうか、いろんな捜査をしたかどうかはどうなんですか」

証人=「このスコップについては、石田豚屋さんについて、あるいは石田豚屋さんの従業員の皆さんに見せるなり何なりして、徹底した捜査がなされたという風に私は聞いております」

石田弁護人=「あまり記憶が定かでないようで若干聞くんですが、法廷には出てないんですが、六月二十一日頃まだ、石田豚屋のスコップが盗難事件について、いろいろと盗難された物かどうかとか、いろんな捜査をなさっておられた様なんですがね、そういう記憶はないですか。逆に言えばその六月二十一日頃もまだ石田豚屋のスコップ盗難の件については捜査本部としては本当かどうか、疑問を持っていたと考えられるんですがね」

証人=「「・・・・・・・・・」

                                             *

裁判長=「証人はスコップのことについては前回の証言にも触れられていないんで、今日初めて触れられたんですがね。あなたはブツの捜索にはあまり関係してない、鞄だけだと言われましたが、スコップの捜査について、自分は直接捜査してない、そのあとで、石田豚屋のスコップが無くなったか否かの捜査は自分自身でやっていないが、あるいは部下にやらせたかも知れないという趣旨の証言をしたように思うんですがね、それは部下にやらしたんですか」

証人=「部下というのが広範囲にあります。私の直接下にいた部下ではなく、捜査一課にいた部下です」

裁判長=「それを前提として言わないとですね、あとでは、捜査本部のほかの係の、もっぱらスコップの捜索をしている人に聞いた結果をあなたが述べたのか、そうじゃなく、自分の部下にやらせたから、自分の責任範囲だから聞いたのか、そこのところはっきりしないので、言い直して下さい。あなたは自分の部下にやらしたんですか」

証人=「スコップの捜査は、私の直接の手元のあれではないけれども、捜査員がやったことは知っております」

裁判長=「スコップの捜査ということについては、あなたは、自分ならびに自分の直属の部下にはやらしてないと、そういうことでしょう」

証人=「そうです」

裁判長=「だからそのあとの証言は、いつ発見されたのを聞いたとかいうのは、みんなそれを専門にやっている人に聞いたということになるんですか」

証人=「そういうことです」

裁判長=「そういう前提で答えて下さい。今の最後の六月二十一日頃盗難の有無についてまだ調べているようだと、これは弁護人の何かの材料に基づいての質問だと思いますが、それについての答も自ずから態度がはっきりするんじゃないですか。そういうことを聞いたか聞かないか、それを答えて下さい」

証人=「従いまして、その捜査をやったかどうかということは私には記憶にございません」

                                             *

石田弁護人=「記憶にないですか」

証人=「ないです。六月二十一日頃となりますと、私には分かりません」

石田弁護人=「六月二十一日頃は、あなたはどんな捜査を主にやっていたんでしょうか」

証人=「やはり私のやっていた仕事と申しますのは川越の分室の方へ行った取調班以外の捜査員がいます、小島警部とか私とか山下警部とか。そういう方々と毎日の捜査方針に基づいて仕事をしておるわけです」

石田弁護人=「具体的な仕事というよりも、本部としてのいろんな事務処理であるとか、指揮関係であるとか、そういうことに主にあたっていたと」

証人=「記録の整理ももちろんそういうことです。それからその直後、私は間もなくよその事件に行ってしまいましたから」

石田弁護人=「いつ頃から行かれましたか」

証人=「六月の二十四、五日じゃなかったでしょうか」

(続く)