アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 717

狭山署において抜かりなく練りあげられた佐野屋での張込み計画。この最初の計画通り捜査員が張込んでいたならば結果はどう出たのか。

当初立てられた張込み計画は、応援という形で狭山署に乗り込んできた中勲課長率いる捜査員らに書き換えられ実行に移されてしまう。

犯人取り逃しはなぜ起きたか。その原因は証人の証言からそれは推し量れる。

【公判調書2266丁〜】

                     「第四十五回公判調書(供述)」

証人=大谷木豊次郎(五十八歳・浦和自動車教習所法令指導員。事件当時、埼玉県警察本部捜査一課・課長補佐)

                                          *

福地弁護人=「じゃ変更になった計画を少し話して下さい」

証人=「それはもう私たちとまあ狭山署の刑事課長と署長とで決めた計画で、それで行こうと、来たものはここで計画変更してもうまくいかないだろうから、来た人員を増員をしただけでいいじゃないか、大体、県警捜査本部におる者は地理的に明るい者はおらないんだから、それで行きましょうと、私は中(勲)課長に進言したんです。ところが今次席が計画を作っておるから待てと、こういうことだったんです。で計画書を作られたわけです。前の計画を、まあ、これは警察のミスなんですけれども、破棄して新しい計画が出来上がったわけです。そうするとその計画書によるとまあ人員も増えたことだしするので、お姉さんがお金を持って行くわけなので、お姉さんを護衛して行く者を連れて行かなくちゃならない、しかし護衛して行く者は傍について行ったんでは犯人に見つかってしまうだろうから、それに、その沿道にもずっと配置したわけです。近くに、何人か人員についてはちょっと忘れましたけれども大体見通しが、大きな声でも出されれば聞こえる程度のところに配置をした、それから私たちが、私が計画したんじゃないんですけれども、狭山の署長と狭山の課長が計画しておいたそこの場所と違ったところ、大体それに似ているんですけれども、違ったところに配置し直してしまったんです。そうすると捜査員が本当にてんやわんやになってしまって、自分でもって署員はここでこういう任務につくということは前もって昼間のうちに話してありますので、そこにつくんだというになっておったところが急遽変更になってしまった、場所も変わってしまった、というようなことで、それでまあ、これはまずいなと私は思ったんですけれども、課長がここをやるんだということで次席がこういう風に作って、これでもってやるということになって、これは本当に警察のミスなんですけれども、土地に明るくない者でも、ただ階級の高い者だけが重要な地点に配置された、そこらのところは、捜査の面は取調べと違ってこれはまずいと思ったんですが、これは行動を議論している間がない、時間が切迫してて、早く配置につかなければ犯人に配置の気配を気(け)取られてしまうと何にもならない、来るか来ないか知れないけれども一応来るものとして配置につかなければならない、で、それでもって行け、総指揮は大谷木がやれと言われたんです。私もその時自分で計画して納得した計画であればこれは喜んで引受けますけれども、これでと言われても、これはやっぱり警察組織でございますから、まあやりましょうということでやったわけなんです。それが経過なんです。計画は私の計画でない、まあ事情の明るくない人が計画を立ててしまって、その計画通りにやったということです」

福地弁護人=「先ほど、最初に作った計画が後で次席ですかが作った計画によって変えられてしまったと、前の計画というのは全部パァになってしまったんですね」

証人=「パァになったんです」

福地弁護人=「最初の計画は何と言いますか、図面か何かに配置図は」

証人=「配置図はちゃんと作っておったんです。それはおそらくもうないと思いますね」

福地弁護人=「その第一回の計画の時の総責任者というのはどなただったんですか」

証人=「その時ははっきりしておりませんでしたけれども、形から言えば署長になります。現場の総指揮者は課長がやってます。私はその当時はオブザーバーの形ですから」

福地弁護人=「第二回目の計画は次席が作られたわけですが、この計画についてもやはり配置図みたいなものは出来上がったんでしょうか」

証人=「一応配置図のようなものはあったと記憶しておりますが、それを作るまでの余裕はなかったと思います」

福地弁護人=「出来上がったのは何時頃でしょう」

証人=「もう、とにかく出来上がってすぐに出発というようなことでございますから、ほとんど時間的な余裕というものはなかったと思いますね」

福地弁護人=「もちろん皆さん狭山警察の中に集まっておられたんでしょう」

証人=「そうです」

福地弁護人=「ただ漫然と、お前どこに行けというのでは張込みにならんと思うのですが、最初に十分な打合せがしてあったと思うんですが、第一回目の計画についてはそういう打合せがございましたか」

証人=「それは警察においてやっておったということを言っておりました。私はその時には参画しておりませんけれども捜査員にはそれが徹底しておるということを聞きました」

福地弁護人=「そうすると第二回目の変更になった計画、第二回目の計画に基づいた打合せというのはあったでしょうか」

証人=「第二回目の実施した計画については打合せをする時間がなかった、ほとんどここへ行きなさいということで、それで実際配置したつもりで図面はありましたから、その図面にここということを言ったんですが、地理のわからない者がそこに行った関係で二百メートルも離れたところに配置についてしまったということもあったんですね」

福地弁護人=「第二回目は人員が増えたと仰いましたが、人員が増えて総勢何人だったか記憶ありますか」

証人=「その点は記憶ありません」

福地弁護人=「三十八名か四十名だったという記憶はありませんか」

証人=「それは、最初の計画で、それくらいはあったんじゃないんですか。それにプラスされたんじゃないでしょうか。あの署員の状態からしてそれくらいじゃなかったかと思いますけれども」

福地弁護人=「そうすると、第二回目十二、三名で駆けつけたと、全員が現場に行ったかどうかは別として十人くらいは増えてるでしょうか」

証人=「そうですね、現場といっても配置された人員はそれくらいになったかと思いますね、広範囲になってますから」

福地弁護人=「十人くらいは増えてる」

証人=「ええ十人くらい、増えた者は全員配置されてます」

(続く)