アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 735

(第三見取図)

【公判調書2308丁〜】

                   「第四十五回公判調書(供述)

証人=大谷木豊次郎(五十八歳・浦和自動車教習所法令指導員。事件当時、埼玉県警察本部捜査一課・課長補佐)

                                          *

宇津弁護人=「結局、その逃げたときの登美恵さんの様子というのは見ているんでしょう」

証人=「登美恵さんは、今度は佐野屋の前の方の軒下の方に来ておりましたので、登美恵さんはもう視界の中にはしょっ中入っておらないわけです。この家の脇のところから顔を出してはこう、登美恵さんの方は大丈夫かと見ておりますから。それから、犯人の方、登美恵さんの素振りだけで犯人が逃げたとか、あるいは登美恵さんが白い影を見たというようなことは、この現場ではこれは分かる筈がないです」

宇津弁護人=「そうすると、あなたが犯人が逃げたんだと直感した根拠は何ですか」

証人=「逃げたか、逃げないか分からない、とにかく時間が経って、俺は帰るぞと言って、約五分も経ったかと思う頃になって、その前は二分か三分くらいに、なんとか話のやり取りがあったわけです」

宇津弁護人=「俺は帰るぞという言葉が耳に入ってもあなたは犯人が逃げるのではないかということは感じなかったですか」

証人=「感じませんでした」

宇津弁護人=「なぜですか」

証人=「今までのやり取りの時間の経過から言っても、いろいろな話を、持って来い、いや、こっちへおいでなさい、いや、行かない、持って来い、というようなやり取りをしておったのが、しょっ中しておったんでなくて、時間をかなり経過しては話をしておったですから」

宇津弁護人=「それでは、あなたがそろそろ逃げたんじゃないかということでね、出て行ったらしいが、登美恵さんはどうでしたか、まだその辺に犯人がいると思っている様子でしたか」

証人=「登美恵さんの方はもう見ずに、とにかく出て行くということになったら一刻も早く犯人のそばに行くということが目的ですから、登美恵さんの方を見ずに私は飛び出して行きました」

宇津弁護人=「それから先ほどの第三見取図ですね、方位の印のある下の方の三叉路ですね、そこに張込みがあったというご証言だったですが、その三叉路から64地点の、直線方向を見通しますとね、これはあるのは、大体茶畑だけですか」

(方位の印)

(印の下の方の三叉路)

(宇津弁護人の言う三叉路から64地点を見通すとは、右のペン先から左のペン先を指す)

(事件当時の航空写真で見ると一見平坦であるが、実際の現地の状況は証人の語った通りであろう。黄色矢印は上記の三叉路から64地点を指したもの)

証人=「茶畑といって、あそこのところはですね、何反歩くらいに分けてあるのか知りませんが、お茶が植えてありまして、その間に作物があって、またお茶があるというような状況で」

宇津弁護人=「作物というのは、茶畑より低いですか」

証人=「麦だとか、ここに書いてありますようなごぼうだとか、○○(注:1)」

宇津弁護人=「つまり、今、お尋ねした方向の範囲内には建物とか、大きな立木とか、そういうものはありませんね」

証人=「そういうものはありません」

宇津弁護人=「たとえば、農道を歩く、もしくは走ったとすれば、普通の人間が立って歩ったり走ったりすれば、上半身が見える程度になりますか」

証人=「上半身全部が見えるとは言い切れないでしょうね。やはり、お茶の木の高いのがありますから、あまりよく見えないんじゃないですか。昼間であれば、あるいは見えるかも知れませんが、夜であると、月明かりにしても、そう満月の月でもないし」

宇津弁護人=「あなたは午前中に、ハンドトーキーを持たず仕舞いだったと仰いましたが、当初、用意はしたわけですか」

証人=「用意はしました」

宇津弁護人=「何台」

証人=「五台か・・・、七台くらいだったと思いますね」

宇津弁護人=「少なくとも狭山署の署員は全員近く動員したそうですね』

証人=「そうだったと思います」

宇津弁護人=「そこには交通警らなどの担当の人もいたわけでしょう」

証人=「もちろん、いたと思います」

宇津弁護人=「少なくとも、そういう交通警らの方々はハンドトーキーなど、いちいち教えてもらわなくても、操作知っているんじゃないですか」

証人=「そういう者は知っていても、全員が知らなければならないし、また、ハンドトーキーでもって、どういうような時にはどうするというような指示を一応しておかなければならないですから」

宇津弁護人=「操作教える暇が無かったから持って行かなかったんだというようなご証言ですが、ちょっとおかしいんじゃないですか。教えられなくても操作をする人がたくさんいたんじゃないですか」

証人=「おかしいと言えばおかしいですが」

宇津弁護人=「本当は持って行ったんじゃないですか」

証人=「持って行ったのもいただろうし、持って行かなかったのもいたと思うんです。その時にはちょっと混乱しておりましてですね、その私がこれを全員持ってどうしろというところの指示までは出来なかったから持って行かなかったと、こういう証言をしたわけですが、実際には、物理的には持って行ったかも知れないけれども、持って行って私どもが司令を出せるような状態で持って行ったわけではないから、持って行ったとは言わなかったです」

宇津弁護人=「あなたの立場で誰がハンドトーキーを操作出来て、誰が出来ないかの判断は当夜出来なかったでしょう」

証人=「ええ、出来ません」

宇津弁護人=「だから、持って行っても使いものにならなかったはずだというあなたのご証言は根拠はないわけですね」

証人=「ええ、根拠はありません」

(続く)

(注:1)印字が不鮮明であり○○とした。第三見取図に基づけば残る作物はジャガ芋となるが。不鮮明具合は写真参照。