アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 663

【公判調書2066丁〜】

                  「第四十一回公判調書(供述)」

証人=山下了一(五十二歳・無職。事件当時、埼玉県警本部捜査一課)⑩

                                          *

裁判長=「ちょっとそこのところ確かめておくが、今、弁護人が聞かれたのはこういうことです。再逮捕状は六月十六日に出されているんですが、これが執行されたのが六月十七日午后三時。で、これには強盗、強姦、殺人、殺体遺棄(原文ママ)が付いている。で、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由、これは疎明資料だが、一から十五、ある。その一というのは総合捜査報告書。二が現場関係記録。三がスコップ関係。四がポリグラフ関係。五が被害者の足取関係。六が被疑者の自供と裏付。これがいかなるものであったかということを今、弁護人が問題にされているんじゃないかと思うんですが、案外、被疑者自供と裏付は、内容は大したものではなかったかも知れないが、それは今の殺人とか、何とか、そういうものに関係した、被疑者自供が疎明資料としてあったかも知れないと疑わせるものがあるから弁護人が確かめたと思う。で、七が被疑者の犯行前后の足取。八が被疑者家族関係アリバイ。九が被疑者五月一日アリバイ。十が被害品関係。十一が被疑者血液型関係。十二が筆跡関係。十三、タオル関係、これが二冊。十四、手拭い関係。十五、足跡関係という風に、一から十五まである。この疎明資料を見ると、再逮捕請求前に殺人、強姦、死体遺棄そういうことについて調べた調書みたいなものも既にあったんじゃないかということを、弁護人は疑問にされているわけです。それは、あなたは表立って調べはしない、関連性については聞いたかも知れないが、主として恐喝未遂のことを調べたと、こう言っているが、そういうことについて思い出すことは別にないですか」

証人=「記憶がどうも薄れてますから」

裁判長=「六に、被疑者の自供と裏付というのがあって、これがいかなるものであったか、今日ではわからないからあれなんだが、これが六月十六日、十七日の段階としてそういうものがあって再逮捕の申請をした、で、裁判所がそれを見てこれは理由があるというので再逮捕の逮捕状を出した、という関係になってますがね」

証人=「どうも記憶が薄れてるんで・・・・・・」

裁判長=「それからもう一つ、河本検事の六月十一日の検察官調書。これは被告人が署名捺印をしなかった調書なんだが、これには一人でやった、とはないけれども三人でやったんじゃないかと思わせるような被告人の供述もある。これは六月十一日だから今の再逮捕の申請をする前にある。これは一審では証拠に出なかった。これは被告人が署名捺印を肯(がえん)じなかったからね。そういう関係もあるんでね、警察官は調べなかったけれども検事は調べてるんだが、そのことについて・・・・・・」

証人=「どうも、記憶が薄れているんではっきり・・・」

裁判長=「それは、確かめただけだから」

証人=「再逮捕後のいろいろな関係の資料があったかも知れませんが、最初の関係なんかはもう現在の段階では殆ど、どんな資料でどうだということは記憶が全然ありません」

裁判長=「だから、再逮捕が六月十七日で、再逮捕をするについて、こういう材料がございますといって、警察官の方から裁判所の方に出した資料の中に、今言った一から十五のものがあるようになってるんだ。その中には被告人が自白しましたと、そういう調書がありますと、被告人が殺人、強盗あるいは死体遺棄とかいうものについて、こういう風な供述をしてますという調書はあったかどうか分からないけれどもね。しかし今言ったような言葉で、自供と裏付というように項目として書いてある。その内容は、今ちょっと分からない。被疑者自供と裏付と書いてあるから見ると、もう既に肝心の殺人とか、強盗強姦のそういう風なことについて調べて、調書までもあったんじゃないかということが推察されないでもないんだ。してみると前から調べていたということにもなる、その点を弁護人が聞いてるわけです」

証人=「調書はなかったと思いますがね」

裁判長=「あなたが知る限りでは自分も作らないし、他にもあったということは知らない、こういうわけですね」

証人=「ええ、はっきりした記憶はありませんが、調書はなかったと思います、再逮捕の時付けた資料の中でしょう」

裁判長=「はい」

証人=「それはなかったと思いますね」

(続く)