【公判調書1275丁〜】証人=霜田杉蔵・六十一才・元浦和刑務所拘置区長。問うのは中田弁護人(以下、弁護人と表記)
弁護人=「石川君が第一審である浦和地方裁判所において、死刑の判決を受けたことはご存知ですか」 証人=「はい、知っております」 弁護人=「死刑の判決を受けたのちに石川君から何か相談を受けたことはありませんか」 証人=「私がですか」 弁護人=「はい」 証人=「判決が終わってから、別に相談という相談は受けたことはありません」 弁護人=「石川君が控訴したのを知っていますか」 証人=「知っております」 弁護人=「控訴の申立は石川君が自分で書いたのでしょうか」 証人=「控訴申立は、申立用紙がありますから、それを渡して、本人が書いたと思います」 弁護人=「控訴の申立をする時に、あなたが何か助言をしたようなことはありませんか」 証人=「いや、ございません、別に」 弁護人=「控訴の申立の書式といった物をわら半紙に書いて石川君に渡したことはありませんか」 証人=「控訴の申立の様式ですか、それは私のほうに用紙がございますからそれを渡して、控訴する場合こういう風に書くんだと教えます。本人は知らない人も大分ありますから」
弁護人=「いろいろ埋めて行かなければならないですね」 証人=「はい、消す所もあるし、付け加えなければならない所もあります」 弁護人=「じゃ、あなたの方にある用紙でもいいですが、用紙をあなた自身が石川君に見せて、ここはこういう風に書きなさいと言ったことはないですか」 証人=「それはあったと思います。控訴したいから控訴用紙を下さいと申し出ますから」 弁護人=「よく思い返して頂きたいんですが、石川君は自分から進んで控訴したいと申し出たのでしょうか」
証人=「と思います。別に私のほうから控訴しなさいと申したことはありませんから」 弁護人=「拘置所では、このような重大な事案で、しかも死刑の判決を受けたという事態にあっては、その被告人がどの様な行状を示すか、どの様な態度であるかということについては処遇上かなりの関心を持ちますね」
証人=「はい」 弁護人=「当然、石川君が死刑判決を受けた時にも、あなたの注意はそこに向けられたでしょうね」 証人=「はい」 弁護人=「石川君の言葉や態度は、どんなものでしたか」 証人=「先程申しました通り、石川君は死刑の判決がありましても、さほど表面上は動揺している風には見えませんでした。内心はどうでありますか、それは判りませんが」 弁護人=「内心は動揺していたが、表面はその動揺を表さないでおこうと努力しているという風にも見えなかったんでしょう」 証人=「そうです」 弁護人=「つまり判決の前と後とで、態度などには変化は無かったということでしょう」 証人=「と思います」・・・続く。
*死刑判決が下されたにもかかわらず、当人は動揺せず・・・か。それもそうであろう。石川被告人にすれば、この当時、十年で出すという長谷部警視との約束があり、それを固く信じていた訳なのである・・・。
写真2点は「劇画 差別が奪った青春 解放出版社」より引用。