狭山の黒い闇に触れる 26
現代教養文庫938「狭山裁判と科学」法科学ノート 武谷三男編(社会思想社)第六章【筆圧痕問題の意味】 狭山事件における三大物証である、鞄、万年筆、時計は、被告の自供により発見されたとされているが、その供述調書が取調官により工作されていた可能性があり、これは被告が第二審で明らかにした、取調官の強制と誘導によって自白へ向かう様子からも明白であるが、本章ではやはり科学的に徹底した分析を行っている。なお、筆圧痕問題は狭山裁判の核となる問題である。さて、取調官がどのような工作をしたのかについてであるが、第二審で被告は「遠藤警部が二枚のザラ紙を重ねて地図を書き、下の方の紙を渡され、そのあとをなぞって地図を書かされたものもある」と述べたが、その地図とはなんと鞄や腕時計の捨て場所なのであった。ここで問題になるのが【筆圧痕】、すなわち「二枚のザラ紙を重ねて地図を書き、下の方の紙を渡され」の「下の方の紙」であり、被告がなぞって書いた鉛筆の線、その線の下に先に遠藤警部がつけた「 痕 」が存在するのか、という点である。ところが、これが見事に存在するのであった。下の写真を見よ。