アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1301

狭山事件公判調書第二審4014丁〜】

       「強姦・殺害・死体処理に関する自白の虚偽」⑤

                                                                弁護人:橋本紀徳

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   (三)    死体あおむけの時間を少し詳しく検討してみる。

   まず、死体があおむけにされたのは、自白による限り、殺害直後より芋穴に逆吊りされるまでの間であることが確認されなければならない。

   検察官は、みたとおり死体が農道に最終的に埋没されるまで、つまり、死体が芋穴に逆吊りをされている間も、死体は芋穴の底にあおむけにされていたというのであるが、これは、かつて、中田弁護人により、逆吊りがあおむけであるなら、首吊り死体はみなうつぶせ死体と呼ばなければならぬと皮肉られた詭弁である。

   自白では、たとえ、どの自白調書をとっても、すべて死体を芋穴に逆さに吊るしたと明白に述べているのであって、死体が―想像すれば―芋穴の底に、寝そべるようにあおむけに置かれたとは一言も述べられていないのである。もし、死体は、芋穴の底に寝そべるようにあおむけに置かれたというのが、本件の真実であるとすれば、被告人の自白は、もはやこの点で事実と大きく食い違うと言わなければならない。

   しかし、被告人の自白から得られる事実は、あくまでも逆吊りであって、穴の底に仰臥させたことではない。検察官の見解はいかなる根拠に基づくものか不明であるが、捜査検察官である原正が当審第十七回公判において、死体左側腹部、左右大腿部に残る線状擦過傷の成因について述べた証言の中で、死体は芋穴の壁に胸部、腹部を向け、胸部、腹部が壁にこすれるように引きおろされ引上げられたと述べているのと真向から食い違うというのはまことに皮肉なものと言わざるを得ない。

   ともかく死体は芋穴の中で逆さに吊るされていたかもしれないが、あおむけに置かれていたものでないことは―被告人の自白による限り明らかなことである。

   (四)  死体あおむけの始点は、殺害直後であり、その終点は逆吊りにされた瞬間であるから、本来この間の時間がどれ程であったかを問題にすべきなのである。

   先の検察官の意見では、これについてはなにも述べられていない。自白も、この間の時間がどれ程であったかははっきりと述べていない。

しかし殺害後、被告人のとった行動は、

(1) 死体をあおむけにしたまま、四本杉現場の檜の下で先行きのことを考える。(この時間は約三十分である)

(2)  四本杉現場より芋穴まで約二百メートルの距離を死体をかかえて運び、死体を芋穴のそばにあおむけに置く。

(3)四本杉の現場に戻り、脅迫状の加筆訂正をおこなう。

(4)四本杉現場より約三百十二メートル離れた中川・椎名方にゆき、荒縄などを盗み、芋穴に戻る。

(5) 死体を芋穴に逆につるす。

であり(以上、七月一日付第二回の検察官調書)、これらの行動の所要時間を推定することは―資料が与えられているので―決して不可能なことではない。

(1)の行動については約三十分と述べられている。

(2)及び(3)の行動は、その行動に要する距離また行動の内容からして、せいぜい五分ないし十分程度の時間しか要しないであろう。

④の行動も、四本杉より中川宅までの距離、中川方の垣根よりの荒縄はずし(荒縄は約二十メートルで八本の杭に上下二段に張り渡されていた)、椎名方建築現場での荒縄はずしなどの各時間を考慮して、約三十分ないし四十分とみれば十分である。(1)ないし(4)の行動を全て合わせておおよそ一時間半である。

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次回(五)へ続く。

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○絞殺した遺体を逆吊りで一旦、芋穴に隠し、その後、付近の農道を掘り、そこへ遺体を埋めた・・・・・・。この筋書きを発案した警察官は江戸川乱歩横溝正史に多大なる影響を受けた者と推察できぬか。まぁそれはどうでもいいが、 被害者が農道に埋められていた事実は動かし難いことは確かであるが、その近くの芋穴に遺体を逆吊りにし隠したという、ひと手間かかる作業が果たして実際に行なわれたのかどうか。犯罪を遂行中の人間は、無駄に時間とエネルギーを浪費することは避け、遺体を一旦隠すというリスクも回避するであろう。したがってこの筋書きは事実とは異なると思われるが。

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○・・・引き続き押入れに詰め込んだ古本を整理する。

   ああこんな本も確かに買ったなあと思い出す。これも東村山市の「なごやか文庫」で確か二百円だったか。

  当時、この店(東村山市福祉センター内に設置)は夕方になると無人販売となっていた。会計方法は、古本に挟まれた値札とそこに示された金額を共に料金箱に入れ完了となる。

   良質な古本をつつましく安値で並べるこの店舗に対し老生は、謙虚な姿勢を示したく、値札の金額に加えて気持ち程度ではあるが余分にお金を料金箱へ入れたりしていたことを懐かしく思う。

   写真の「長鼻くんという うなぎの話」という古本は現在まあまあ高値で売買されているようである。

   本書の奥付、上から三段目にある「第2刷」に続く(E)という表記は何を意味するのか気になる。