アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1256

狭山事件公判調書第二審3854丁〜】

「第六十八回公判調書(供述)」(昭和四十七年九月)

証人=大沢利昭(四十一歳・東京大学教授)

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山梨検事=「ちょっと言葉の意味なんですが、十一ページなんですが、混合使用について、それに関連して一番最後のところ『一部が封筒に予めつけられており、他は封緘するにあたり糊付けしたものかどうかは不明である』という、『他は』というのは具体的に言うと、どういうことを意味するんでしょうか」

証人=「ある、その少なくともですね、封緘部分に澱粉糊かアラビアゴムが明らかに存在することが分かったんです。それからポリビニルアルコールの存在を必ずしも否定することは出来ないということですから、そうしますと、その内の澱粉糊が初めから封緘部分に付いていた、そのほかのアラビアゴムあるいはポリビニルアルコールを、後、糊付けするために付けたかどうかは、これは分からないという意味です」

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藤田弁護人=「こういう封筒には動物性のゼラチンなどが前には使われておったと思いますが、そういうものは使われておりましたか」

証人=「これは使われておりませんでした」

藤田弁護人=「貼り合わせ部分からは全く動物性のものは」

証人=「検出は出来ませんでした。たとえば、これは蛋白反応は少なくとも出ませんでした」

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福地弁護人=「市販の封筒の封緘部分に予め使用してある接着剤について、私ども少し調べてみましたが、これ、混合の割合を教えてくれたんですが、先生には教えてくれなかったそうですが、私どもには教えてくれたんです」

証人=「ああそうですか」

福地弁護人=「それによりますと、アラビアゴムが九十五パーセントで、澱粉が三パーセント、ポリビニルアルコールが二パーセント、という風に聞いたんです」

証人=「それは、いつもそうだという風な・・・」

福地弁護人=「いや、それはあらゆる業者を辿って聞いたわけではございませんが、私ども聞いたのでは、一般的にはそういう割合らしいんです。で、一つの前提を立てますと、こういう混合の割合に使用されているとしますと、澱粉三パーセントというのは非常に少ないように思うんですけれども、百パーセントの内の三パーセントですね、これで、先生の実験方法でもやはり出ますでしょうか」

証人=「澱粉ですか。それは今、確信を持って申し上げることは出来ません」

福地弁護人=「つまり、先生の実験されたものは八ミリと一センチですか、ですから面積としては」

証人=「非常に小さいです」

福地弁護人=「試料が少ないということを先生も言っておられますね」

証人=「はい」

福地弁護人=「しかもそれが三パーセント、ということになると・・・・・・という風に私どもは思うんですが、先生のお考えとしては」

証人=「確信を持って申し上げることは出来ませんが、かなり難しいだろうとは思います。ということは敢えて申し上げれば、私どもは市販の封筒から同じように切り取りまして糊を検出した場合に、アラビアゴムしか検出出来なかった、その原因かも知れませんが、私は今ここで確信を持って申し上げることは出来ません」

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藤田弁護人=「唾で、封筒の部分を舐めてくっ付ければ、先ほどの蛋白反応は出るんじゃないでしょうか」

証人=「その程度で出るかどうかというのは私は確信を持って申し上げることは出来ません。私、行ないましたのはいわゆるミロン反応(注:1)というやつで、これはかなりないと出ないと思います」

藤田弁護人=「ほかの検査方法でやれば出る方法はあるんですか。可能性は」

証人=「非常に感度のいいのでやれば出る可能性もございますね」

藤田弁護人=「可能性、の程度ですか」

証人=「ええ、可能性で」

藤田弁護人=「そういう検査はなされなかったわけですね」

証人=「唾の検査のほうは私は分担しておりませんでしたから」

(続く)

注:1  ミロン反応

Millon's reaction

タンパク質の星色反応の一つ.フェノール性ヒドロキシ基をもつアミノ酸であるチロシンやヒドロキシフェニルアラニンの検出・定量法。チロシン

にミロン試薬(水銀を発煙硝酸に溶解したもの)を反応させるとニトロソフェノールの水銀錯塩が生成し、褐色を呈する。改良法として、硫酸水銀(II)と亜酸ナトリウムで濃赤色(2max 480mm)に発色させる方法がある。反応はフェノールによるので、サリチル酸やチモールなども陽性である。NaCl, トリプトファンなどにより阻害される。臨床応用として家中のフェノールの検出に用いられる。