アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1254

狭山事件公判調書第二審3850丁〜】

「第六十八回公判調書(供述)」(昭和四十七年九月)

証人=大沢利昭(四十一歳・東京大学教授)

                                            *

福地弁護人=「先生のこの実験は鑑定書を拝見しますと、定性分析あるいは試薬による分析はなされておりますけれど、定量分析はおやりになっていらっしゃらないのか、定量分析についての結論が書いてないようですが」

証人=「はい、定量は致しておりません。ただこれをですね、今の条件下でざっとした定量をしようと思えば出来ないことはございません」

福地弁護人=「試料が非常に少ないという理由で・・・」

証人=「はい、さようでございます。非常に少ないということで」

福地弁護人=「普通ガスクロ(マトグラフィー)によってもある程度の定量は可能でございますね」

証人=「可能でございます」

福地弁護人=「先生の実験の場合には、先生がその結果をお書きにならなかった理由は」

証人=「定量的な意義があるかどうか、ということでございます。それから鑑定事項に定量的なことを要求されておりません、ということが大きな理由です」

福地弁護人=「そういたしますと、ガスクロ(マトグラフィー)のグラフを拝見すれば、ある程度の量的なものは判断出来ますでしょうか」

証人=「ある程度の量的なものを判断できる可能性があります」

福地弁護人=「この程度の、つまり先生はこの封筒から八ミリと一センチの部分を切り抜いておられますが、この程度でも定量の可能性はございますか」

証人=「非常に難しいですが、非常に大雑把な定量は出来ましょう」

福地弁護人=「誤差はどの程度でしょうか」

証人=「かなり大きいと思います」

福地弁護人=「もう少し切り取り部分を大きくすればより精度の高い結果が得られますか」

証人=「もちろんそうです」

福地弁護人=「先ほどポリビニルアルコールというのは、ガスクロ(マトグラフィー)で非常に出にくいと仰いましたか」

証人=「はい」

福地弁護人=「澱粉についてはどうでしょうか。ガスクロ(マトグラフィー)に限らず元々定性のし易いものでしょうか、しにくいものでしょうか」

証人=「澱粉は、澱粉自身としては定性はいたしますが、ガスクロマトグラフィーにかけるわけではございません、これは澱粉加水分解いたしますと、グルコースまでかえまして、それを揮発性の誘導体にかえて、それを検出する、この場合にはかなりやさしいことでございます」

福地弁護人=「そうすると、あるいは微量でも出やすいというようなことは言えますか。特に定性分析の難しい物質ですか」

証人=「定性はかなりやさしいです」

福地弁護人=「これはいわばどうでもいいことかも知れませんが、ガスクロ(マトグラフィー)の分析をされた表二、というものがございますね。八ページですが、この澱粉糊と封筒貼り合わせ部分に、五、六分というんでしょうか」

証人=「はい、五、六分でございます」

福地弁護人=「五、六分というところに現われた反応、これは不明であるという風にこの鑑定書には書いてございますが、現在でもそうでございますか」

証人=「ええ、依然不明でございます」

福地弁護人=「最後に二十六ページに、この鑑定は昭和四十六年二月十一日に着手して、四十七年五月三十一日に終了と、なお鑑定資料は四十六年十二月十五日に返却したと書いてございますけれども、鑑定資料を返却したあとでは考察をしておられたんでしょうか」

証人=「考察もございますし、それから若干の抽出した試料を持っておりました。それは結局は五月三十一日まで使用いたしましたが、その時点においてはもうこれ以上置いておく必要がないと認めましたので残りの鑑定資料は返却いたしました」

(続く)