アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1253

狭山事件公判調書第二審3848丁〜】

「第六十八回公判調書(供述)」(昭和四十七年九月)

証人=大沢利昭(四十一歳・東京大学教授)

                                            *

福地弁護人=「少しそれでは具体的な鑑定の内容についてお尋ねしますが、ガスクロを使った試験によればポリビニルアルコールは検出されておりませんね」

証人=「はい」

福地弁護人=「これは、検出されなかった理由というのはどういう理由によるものでしょうか」

証人=「ポリビニルアルコールのガスクロマトグラフィーによる検出は非常に難しいんですが、ガスクロマトグラフィーにかけるためには物質を揮発性のものに変えなければなりません。揮発性のものとして検出するわけですけれども、この条件下ではポリビニルアルコールを揮発性のものに転化することが出来ません。もう一つはポリビニルアルコールを揮発性のものにしてガスクロマトグラフィーにかけるということは非常に難しいものですからそれは行ないませんでした」

福地弁護人=「ただ先生のご結論としてはポリビニルアルコールはあるだろうという風に伺ってよろしいですか」

証人=「あるかも知れません。存在を否定することは出来ないということです」

福地弁護人=「また、違ったことをお尋ねしますけれども、封筒の封緘部分に予め付けられておる、市販の封筒に、先生が三つほどの資料を確かめられたと、この糊は混合糊でございますね」

証人=「これは混合と認められませんでした。三種類については、それはたまたま混合でなかったのか、混合であるということを立証出来ませんでした。はっきり申し上げますと、それらの場合にアラビアゴムだけを検出致しました。ただ、その、いわゆる接着便覧あるいは業者の話によりますと、かなり混合使用することが多いという話で、たまたま、私がアトランダムに検査した封筒についてはアラビアゴムだけを」

福地弁護人=「その結果は鑑定書の中には」

証人=「入っておりません」

福地弁護人=「それは三つの実験資料の全部についてそういう結果でしたか」

証人=「二種類について」

福地弁護人=「三つのうち二つはアラビアゴムだけがはっきり検出されたということですか」

証人=「そうです」

福地弁護人=「そういたしますと市販の封筒のあれに、果たして混合糊が必ずしもあるかどうかは先生の実験結果からは、はっきりしないという風に言ってよろしいですか」

証人=「はい、そういうことです」

福地弁護人=「その市販されたものを求められたうちの一つは混合糊であることが実験結果から明らかになったでしょうか」

証人=「一つは何も検出出来ませんでした。ということは、恐らくポリビニルアルコール系統のものが付いていたんじゃないかと思います」

福地弁護人=「いずれもでんぷんは検出出来ないですね」

証人=「でんぷんは、市販のもののいわゆる糊付けした部分は、舐めればつくと、その部分からはでんぷんは検出出来ませんでした」

福地弁護人=「貼り合わせ部分には」

証人=「ございました、明らかにでんぷんが検出出来ました」

福地弁護人=「そうしますと、もう一度鑑定書に戻りますが、先生の鑑定書の考察の部分に、一般には混合使用することが多いと、したがって予めでんぷんが付いておったのかも知れないと、こういう、考え方の道筋としては、先生のご鑑定としてはこういう道筋を辿るわけですね、本件封筒に予めでんぷんが付いておったなかも知れないと」

証人=「はい、さようでございます」

福地弁護人=「先ほど私お尋ねしたかも知れません、あるいは再びお尋ねすることになるかも知れませんが、予め三つの混合接着剤が市販の封筒に使用されておるかどうかについての、先生の前提となる調査でございますけれども、これは接着便覧と、二、三の業者からの回答でございますか」

証人=「さようでございます」

福地弁護人=「先生ご自身が町でお求めになったかの三つの封筒は、必ずしもこの三つは、混合使用されておったという形跡はなかったと」

証人=「それがですね、アラビアゴムが検出できて、でんぷんが検出できなかったからと言って、必ずしもでんぷんがなかったか、ということを確信を持って言うことは出来ませんけれども、まず非常に高いプロバビリティをもって、なかったと思います」

福地弁護人=「その接着便覧、あるいは業者から先生が得られた情報、三つの接着剤の混合使用でございますけれどもその混合の割合については。分量、これについては」

証人=「聞かしていただけませんでした。これは何か商売上の秘密があるかも知れません。それについては私は業者からも回答を得ることが出来ませんでした」

(続く)