アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 875

【公判調書2731丁〜】

                     「第五十二回公判調書(供述)」

証人=青木一夫(五十六歳・川越市役所臨時嘱託)

                                           *

山上弁護人=「六月二十三日には"今まで三人と言ってましたが悪うございました、私一人でございます"という供述になっておるということはご記憶ありますね」

証人=「はぁ」

山上弁護人=「その後、そういう一人でやったか、二人でやったかというような聞き方もなさっておったのですか、どうですか」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

山上弁護人=「もう完全に一人だというのか、あるいは二人の疑問もあるのでこの点はどうなんだと、一人かね、二人かねというような尋ね方をなさっておられたのかどうか」

証人=「一人か二人かというような具体的な数を出して調べた記憶はないと思いますがね」

山上弁護人=「それは記憶だからね、間違いもあるだろうけれども、そうすると、一人か二人かという特定の数字はともかく、一緒にやったのか、そういうような尋問はずっと続けておられたわけですか」

証人=「していないんじゃないかと思いますが」

山上弁護人=「ところが、六月二十八日付のあなたの調書によれば、突然、その複数説を予想した尋問があるわけですね。読んでみましょうか、二十八日付の調書の第二項ですかね、"埋めることを誰かに手伝ってもらったか"という尋問がありますね、二十三日から五日経っておりますがね、やはり、そういう問題を感じていらしたんですか」

証人=「感じていたかどうかは分かりませんけれども、まあ、聞いておく必要があるんじゃないかということで聞いたんじゃないかと思いますが」

山上弁護人=「二十三日から二十七日までの尋問ではね、見かけないんですね、複数説を予想した尋問というのはね。もういっぺんお尋ねしますが、二十八日の調べの折に、中にポツンとね、"埋めることを誰かに手伝ってもらったか"という尋問があるんですね。やはり、捜査内部で問題になっておったんですかね」

証人=「問題になっておったかどうか、その点は記憶ありませんけれども、これは雨が降った日じゃなかったでしょうかね、一日というのはね。それで、穴を掘ったりするのに本当に一人でやったんだろうかという疑問が湧いたんじゃなかったでしょうかな」

山上弁護人=「やはり、一人で穴が掘れるかどうかという疑問が持たれて、で、尋問 なさったということですか」

証人=「あったという断定はできませんが、そうではなかったかと今、考えたわけです」

山上弁護人=「それから、これも疑問なんですが、六月二十三日に単独自供したと、で、そのときの石川君の自供によれば、善枝さんという人の殺し方はタオルで首をしめたということになっておるわけですね。これは六月二十三日付の第八項ですかね、"自分の首に巻いていたタオルで、夢中で善枝ちゃんの首をしめてしまいました"と、こういう具合にあるんですね。で、その後でですね、首を手で押さえておるうちに思わず死んだという供述になっておりますね」

証人=「はあ」

山上弁護人=「これはまあ、青木さんにしてみれば被告人がそう言ったから書いたという風にも了解はできますが、この点は、あなたの方で突っ込んで聞いたことがありますか。というのはね、六月二十三日に単独自供した。それから同じ六月二十三日付の石川君の調書によれば"私が無事に出られたら一週間毎に御参りに行きます"という、まことに全て悪かったという風な書き出しで始まっておる、その六月二十三日付の調書には、タオルで夢中で善枝ちゃんの首をしめたとなっておりますね。私が疑問なのは、通常、本当に悪かったと、ここで全部言いますというような時にね、もっとも大切な首のしめ方、殺し方は本当のことを言うはずだと思うわけですよ。そして、そのあと、何の関連もなく、供述は手で首を押さえて殺したということになっておるわけですね、あなたはその関連を尋ねたことがあるかどうかです」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

山上弁護人=「重大なことだと思うんですがね」

                                            *

山梨検事=「手でしめたというのはどこに書いてあるんですかね」

山上弁護人=「"タオルで夢中で善枝ちゃんの首をしめてしまいました"と」

山梨検事=「"はじめは両手でしめ、その端を自分の右手で押さえ、私の左手で伝々"とありますね」

山上弁護人=「全部読みましょうか、"タオルで善枝ちゃんの首をしめてしまいました。騒がれたので私は夢中で首をしめたのですが、はじめは両手でしめ、その端を自分の右手で押さえ、私の左手で伝々"と、これはまるっきり殺害の方法と変わった供述を、本当に悪かったというその日の供述に、タオルで首をしめた、両手で首をしめたということになっておりますね。これは僕は非常に重大な点じゃないかと思いますがね」

山梨検事=「"はじめは"となっておりますが、その後"そのとき私は右手でずっとタオルの両端を持って首をしめていました"と、これは前後が関連しておるんじゃないでしょうか」

山上弁護人=「だから、全部を読んでもいいですよ。で、最後のほうは、"そのとき私は右手でずっとタオルの両端を持って首をしめていました"と。従って、この個所はですね、タオルの両端を持って両手でしめたと。いずれにしろ本件で殺し方として確定しておる、手で首を押さえながら扼殺した、扼殺という言葉を鑑定では使っておりますがね、全然違うということを僕は疑問に思うんです。追及されたかどうかと聞いておるんです。本当にやったものがそれだけ変わりますかな」

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証人=「全くその点について追及してあるかどうか記憶がありません」

山上弁護人=「まあ結構です。重大な疑問として指摘しておきます」

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山上弁護人の最後の発問であるが、実は、「〜重大な疑問として指摘しておきます。それから〜」と、間髪を入れず腕時計の問題へと続くのだが、とりあえずは殺害方法の件についての尋問に区切りが付いたところで、この続きは次回に引用とする。なお、「」(カギカッコ)でまとめられた文章を分割して引用するという行為はまるで無謀な、そもそも引用などとは決して呼べぬ、むしろ元々の文章の破壊行為と呼べよう。 失礼極まりないあってはならぬことであるが、一つの実験として実行を試みた。