アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 834

確定判決から約半世紀の今年2024年、裁判所は再審可否の判断を迫られそうだ。それも「可」の方向にである。そう推測できる根拠は、弁護団が第三次再審請求において提出したうちの特に二点の鑑定結果、中でも万年筆のインクに関する鑑定結果を知ったからである。その内容が理解出来た途端、私は全身に鳥肌が立つのを覚えた。しかし袴田事件再審に対する検察側の猛烈な反発を目にすると油断は禁物であり、証拠物の全面開示請求など、彼等にさらなる追込みをかけねばなるまい。

下山第二鑑定(蛍光X線分析でインク含有元素を検査)

福江鑑定(コンピュータによる筆者異同識別鑑定)

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【公判調書2578丁〜】

                     「第五十回公判調書(供述)」

証人=岸田政二(五十七歳・自動車教習所管理者)

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山上弁護人=「証人はこの善枝さん殺しのこの事件以外に、殺人等の事件は、度々捜査は経験されたことがありますか」

証人=「捜査一課長時代の・・・」

山上弁護人=「あなたが警察官になってからの経験されたことでも結構ですが」

証人=「ございます」

山上弁護人=「その中で死体を穴の中に埋(ず)めた事件についての捜査もありますか」

証人=「ございます。一回だけ」

山上弁護人=「その一回だけ経験があるというのはやはり、本件の穴は調査上では深さ約八十センチくらいのものですが、あなたが経験されたものもそれくらいの深さですか」

証人=「それよりもちょっと深いような、死体が半ば屍臘化した状態で発見されたんです」

山上弁護人=「そうするとあなたが経験された過去の事件は死体を埋めてから相当時間が経ったような事件ですか」

証人=「ええ、約一年ばかり経ってから発見された事件です」

山上弁護人=「この善枝さん殺しの死体を埋(ず)めた発掘現場に行かれたことはあるんですね」

証人=「ございません。先ほども申上げましたように当日は連絡のために県警本部に私行っておりまして、浦和の県警本部において死体が出たという電話を受けまして、戻りましたら現場から運ばれておったので解剖現場へ、それで発掘現場は見ておりません」

山上弁護人=「発掘現場を見てないというご証言は、発掘現場に全然当日行ったことはないということですか」

証人=「行ったけれども死体は運ばれておったと。その日は発掘現場は見ておりません」

山上弁護人=「前回の証言ではそのあと数回、何回も行ったことがあったというご証言でしたが、それは事実ですね」

証人=「事実です」

山上弁護人=「発掘したあと、善枝さんをお父さんお母さんのいる場所に運んだらすぐその穴は埋(ず)められたんですか、数回行って見られた状況は、その夜は」

証人=「はあ、どうだったかな・・・・・・。どうも現時点においての記憶では、私の見たときは埋められた後だったような記憶ですが」

山上弁護人=「数回、あなたが行かれた趣旨は何か具体的な目的があって現場を見に行かれたんですか」

証人=「自分で現場はどこだろうかということで行ったんです」

山上弁護人=「そうするとあなたがそういう関心を持って行かれた時に、穴が埋(ず)めてあったか、そのままであったか記憶ありませんか」

証人=「ちょっと今、記憶がはっきりしません」

山上弁護人=「普通はまあ死体は穴を掘って埋(ず)めますね。その場合に死体を埋(ず)めて、掘った土をさらに上にかけますね。この場合はそうだと思いますが、その場合に土が余るということがあるんではありませんか。掘り返した土で埋(ず)めるとそのあと掘った土が余るようなことが」

証人=「さあ、その点は・・・・・・」

山上弁護人=「我々の調査では相当、土が余るはずなんですが、あなたの判断の基準のために申上げますと、善枝さんの体は、五十五・六キロに身長一メートル五十四、五センチくらい、そうしますと、そういう物体を入れた場合に、今まで掘り返した土を埋(ず)めたら相当の残土が出ることが分かっておりますが、どうでしょう。本件に即して考えれば」

証人=「さあ、箱に入れてあったわけじゃありませんから、そんなに余ることは考えられないと思いますが」

山上弁護人=「そんなに余ることはないと思うが、というのはあなたの今、単なる推測ですか」

証人=「ええ。現場を見ておりませんから」

山上弁護人=「当時捜査会議で砂が相当余るはずだ、その砂をどういう風に犯人が処分したか少し調べてみようじゃないかという問題は起こりませんでしたか」

証人=「さあ・・・・・・。ちょっと記憶にございません」

山上弁護人=「あなたは死体を埋(ず)めたところを発掘したあと現場に数回行かれたようですが、そういう残土が盛り高くあったとか、あるいは残土が周囲にあったということは記憶しておりませんか」

証人=「記憶しておりません」

山上弁護人=「普通、これは、無理なご質問かも知れませんが、本件の現場のように掘って死体を埋(ず)めて、さらに砂で埋(ず)めるという過程は捜査会議などで何分何秒くらいかかるだろうかという問題は出ましたか」

証人=「出た記憶はありますが、その結果については記憶ありません」

山上弁護人=「どんな風な出かたをしたんですか。もう少し記憶があれば、一人で掘ったら何分、二人で掘ったら何分、三人で掘ったあと埋めて何分とか、いろいろあると思いますが、どういう問題の出かたですか」

証人=「ええと、掘るのにどれくらい、埋めるのにどれくらいかかるだろうか、という検討ですね。そういう検討はしたような気がしますが、細かな内容は記憶がないし、その結論についても現在記憶がはっきりしません」

山上弁護人=「そういうことを検討なさった場所、機会というのはどうですか。これ勿論五月四日以降の捜査会議ですね」

証人=「ええ、以降の捜査会議ですね」

山上弁護人=「何日頃」

証人=「死体が出て間もなくの頃だと思います」

山上弁護人=「その時には残土の処理はどうだったのかという問題は出ましたか」

証人=「さあ、細かいことはちょっと記憶にございません」

山上弁護人=「細かいことはと言われると、大きいことは覚えているように聞こえますが」

証人=「ご質問にあるようなことは今、記憶に残っておりません」

山上弁護人=「あなたの方で実際に穴を掘ってみて善枝さんの死体に該当するほどの物体を入れて埋(ず)めてみて、残土がいくら出たかという実験をなさったことはありますか」

証人=「やってないと思います」

(続く)

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地面に穴を掘り遺体を埋めた場合、残土は発生するのか。また発生する場合、その量はどの程度かという疑問に対し実験が行なわれた。

昭和四十六年八月九日十時半、狭山市入間川一丁目、埼玉県園芸試験場入間川支場の付近の市有地で、大体土質の同じ黒土の畑で残土の量を実験した。支援団体の関係者ら立会いで、判決と同等の穴を掘り(所要時間=二十四分十四秒)、等身大の人形は準備した穴に埋めずに元通りに穴を埋める(所要時間五分十三・五秒)、残土を農林省規格品の二斗袋で測る。量は二斗袋で四杯(強)、全部の目方は百四十三・十五キロの残土である。これに被害者の容積の残土をプラスしたものが大体総体の残土の量であり、結果、全体の量は相当に多量と推定される。

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この残土問題に関し、東京大学の八幡敏雄教授は次のとおり鑑定している。

・・・・・・鑑定事項(三)   同地質(実験場)において、当年二十四歳前後の男子(土工)が、「昭和三十八年五月四日付司法警察員警部補大野喜平作成の実況見分調書」記載のとおりの穴を掘り、身体百五十四.四センチ、体重五十四キロの女性死体を埋没し、同じ土質の土をかぶせて埋めた場合の、作業時間および残土の量如何。

○鑑定結果(三)について。実験は埋め戻しを、

イ、ただ土を投げ込むだけで表層付近のみ多少足で踏み固める式のやり方の場合と、

ロ、土を投げ込んでは穴の中に入って足で踏み固め、再び上に上がってまた土を投げ込むというような動作を数回繰り返す丁寧な埋め戻しの場合と、二つの場合について行なった。

二つの場合とも、掘り上げた土の量は千三百瓩(キログラム)であったが、結果は前者の場合は二百四十七瓩(十九%、石油かん約十六杯分)の土が、後者の場合は九十二瓩(七%、石油かん約六杯分)の土が残った。しかもこれは土以外の物体を埋めない場合の結果である。また、堀作と埋戻しとに要した時間は、前者では約三十分、後者では約三十五分であった。

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なるほど、地面を掘りそこへ何か埋めた場合、埋めた物体の容積分が残土として残るということか。ではこの残土はどこへ行ったかというと、寺尾判決によれば、被告人が残土を周辺に撒き散らし、のちに降った雨で流されたと片付けられる。かなり大雑把な、これは推測である。どれほどの量の土をどのような方法でどのくらいの範囲に撒き散らしたのか、判決では触れられていない・・・・・・。