アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 711

(被害者の遺体が発見されたときの模様。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用)

【公判調書2240丁〜】

                  「第四十四回公判調書(供述)」

証人=大野喜平(六十歳・会社員) 

                                          *

山上弁護人=「あなたが現場でこの死体の実況見分にあたられたときには、すでに穴はいくぶんか掘られておったんですね」

証人=「ありました」

山上弁護人=「大野さんの作っておられる見分調書を見ると、穴は深さが八十何センチであるという具合に、最後まで掘ったところかね」

証人=「はい」

山上弁護人=「それで最初、大野さんが穴に行かれて掘られるときには、すでに〇.六二メートルまで掘ってあったと、そういうご記憶ですか。そう書いてあるんですがね」

証人=「それはですね、平らじゃないんですがね」

山上弁護人=「平行じゃなくて」

証人=「少し傾斜がありましてですね、あとから考えると、頭の部分の方が少し浅いんです。足の方が少し深いような感じです、私の感じでは。その一番深いところという意味に了解していただきたいんですが」

山上弁護人=「その浅い深いということも八年前になりますからね、どの程度の落差と言いますか、ご記憶ないですかね。頭の方はどのくらいの深さですか」

証人=「それはどのくらいと言われても」

山上弁護人=「そうすると、大体、実況見分調書に書いておられる通りに、あなたが現場に着いたときには、平均して、まあ、〇.六二メートルくらいまで掘ってあったという風にお聞きしていいわけですか。そう違わないでしょう、落差は」

証人=「そう違わないです。あとで見ると、足の方が少し深めであったという風に記憶しております」

山上弁護人=「そうしますと、〇.六二メートルというのはですね、どの部分を計られて言ったんでしょうね」

証人=「まあ、深いところと思うんですがね。多少の傾斜を見て、深いところという記憶です」

山上弁護人=「そうすると、全部掘った深さが〇.八〇以上だということになると、半分以上は掘ってあるということに結論的にはなりますが、すでに掘ってあった土はそばにありましたですか。あると思うんですがね、通常であれば」

証人=「その状態ではまだ量というのはばかに多い量でないから、近くにあったということは考えられます」

山上弁護人=「その近くにあった、すでに掘り起こされた土ですね、これはあたられましたか、どういうものがあるかということを見分されましたか」

証人=「あたられたというのは」

山上弁護人=「検分したかということですね」

証人=「それは弁護人のお聞きになるのは土の特徴ですか」

山上弁護人=「私が聞いておるのは、素直に聞いていただければすぐわかると思うんですが、すでに掘り起こしておったわけですね。そうすると、泥が横に置いてあるということが想定されますね。その、横に置いてある泥を、こう見分けましてね、特に特徴がある泥が含まれておられるかどうか、検分なさったかどうかということです」

証人=「土質は何か書いてあるように思うんですがね。実況見分のときに」

山上弁護人=「書いてないんですがね」

証人=「記録に何か黒だとか赤だとか、何か書いたような気がするんですが」

山上弁護人=「そうすると、特に、たとえば具体的に例を挙げますと、ビニールの布があったとか、掘り起こしている土ですよ」

証人=「それはほかの弁護人から仰られたように、その過程においてその後かもわかりませんが、いずれにしても茶の葉のことなんですから、土に一緒にそれが混じっていたということは、その後だか、それまでだか忘れましたが、掘るときに土に混じっていたということもですね」

山上弁護人=「茶の葉のことを聞いているんじゃないです。掘り起こして横に置いてあったと仰るから、もしそれがご存じであればですね、すでに掘り起こしている土についても、どういうものが、あるいは、特異な発見物があるかどうか、特にあたられたような記憶があるかどうかという、その点だけ」

証人=「それはありません」

山上弁護人=「それで、見分調書によると、先ほどの弁護士さんが仰ったように、更に押し進めていくと、古い茶の木の葉が出てきたと、こういうことですね」

証人=「はい」

山上弁護人=「そうすると、あなたが途中で、〇.六二メートルまで掘られているところへ行った。その現場で見たときには、まだ茶の木の葉というものは発見されなかったという具合に聞いていいんですね」

証人=「現場というのは」

山上弁護人=「途中から行きましたね」

証人=「ええ、ある程度途中まで掘ってありますから」

山上弁護人=「その途中まで掘ってあるその状態のときには、その茶の葉は気付いてなかった」

証人=「気付きません。掘っている過程において出たわけです」

山上弁護人=「これも別段、あなたと論争するわけじゃないんですがね。事実を確かめるだけですがね。まあ、農道の穴のそばに茶の木の柵があったと、こういうことですね」

証人=「はい、ありました」

山上弁護人=「で、当時、五月ですね、新芽の茶が出るときですね」

証人=「はい」

山上弁護人=「そうしますと、狭山は有名なお茶を摘むところですね」

証人=「はい」

山上弁護人=「すでに古い茶は摘んでますからね。特にその辺に古い茶の葉があるということはないんじゃないでしょうかね」

証人=「そうじゃないです。あれは灌木ですから、灌木で、もくもくと出てますから、奥の方にはかなり、行ってご覧になるとわかりますが、古い葉があります。そこへ泥を一旦投げなければ、容積が多過ぎますからね。そこまで投げなければ多過ぎますから」

山上弁護人=「茶の木の葉の形状はどのくらいの大きさですか。あなたが見られたところでは」

証人=「それは枯れて落ちたやつですから厚いから、そう腐らないであるんですね。ああいうものは厚い灌木ですから」

山上弁護人=「茶の葉も相当多量に混じっていたんですか」

証人=「多量にということはありませんけれども、散見されましたですね。多量にということはないですね、散見されました」

(続く)