アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 868

【公判調書2714丁〜】

                   「第五十二回公判調書(供述)」

証人=青木一夫(五十六歳・川越市役所臨時嘱託)

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(裁判長が述べた、"日にちも経ち、あるはずないと思われたところから時計が発見されたことに対し証人は捜査官としてどういう解釈をしたか"という問いに青木一夫証人は・・・)

証人=「後々も考えましたんで、これは想像になりますけれども、具体的に分かりませんし証人もありませんから、私は、ここから発見されたということは、実際にここに捨てられて、そうして、誰かがひょっとしたら、拾って持っておって、そうしておったと。ところがこの供述に基づいて警察が捜索を致しました。そしてその持っておった人がひょっとしたらこれはもう警察の関わり合いになっては困るということで、再び捨てたんじゃないかという風な想像を致しました。で、この時計について、いく日くらいここに置かれたかという鑑定もなされていると思うんです」

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福地弁護人=「もう一回言って下さい」

証人=「この時計について、いく日くらいこの場所に置かれただろうかという鑑定とか、あるいは検査ですか、そういう方策も講じられたのではないかと私は考えております」

福地弁護人=「つまり誰かが拾って、そこへまた捨てたんだろうという解釈ですね」

証人=「解釈じゃありません想像です」

福地弁護人=「同じようなものだ」

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裁判長=「そうしてみると、何日ぐらい現場に落とされていたかということも警察としては、何か、それを調べたはずであると、こういう風に思うんですか」

証人=「調べたであろうと思います」

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福地弁護人=「調べたかどうか記憶ありますか」

証人=「それについては記憶ございません」

福地弁護人=「あなたの、想像だか解釈だか分からんけれども、つまり誰かが拾ってまたそこへ捨てなおしたんだろうという、こういう意見は、あなただけの意見ですか」

証人=「私の個人的な考え方です」

福地弁護人=「警察があなたと同じような考えを持ってそういういろんな検査をしたんじゃないかと、そういう趣旨のことをあなた言いましたね」

証人=「検査したかどうか分かりませんけれども、当然、たとえば三十日、これは、二十四日ですから三、四十日、もっとですか、五月ですから四十日か五十日放置されてるわけですから、その間、雨に濡れた場合には、どういう現象を呈すとかいうようなことについての調査がなされて当然だと私は思うんです。誰かが拾って持っていたのではないか、というのは重ねて申しますが私の想像ですから、それ以上の理由はございません。あるいは、そのままその場所にずっとあったのかもそれは分かりません。そして、警察が捜索をした場合にも発見されずにおって、今度誰かが、年寄りの男の方だったと思うんですけれども、警察が見つけてるということで見つけたのか、そこのところは、誰も知らないところですから」

福地弁護人=「警察がこの三叉路を何回捜索したか知ってますか」

証人=「何回やったかは知りませんけれども、この付近一帯にわたって捜索をしたということは聞いております」

福地弁護人=「その時には見つかったんでしょうか」

証人=「見つかっておらなかったと思います」

福地弁護人=「つまり一回目の捜索でこの付近を捜索して見つかってないということですね」

証人=「はい」

福地弁護人=「すると、そのあとの捜索で見つかったわけでしょうか」

証人=「いや、これは誰か第三者が発見してくれたように聞いております。七十ぐらいの男の人でありましたか、確か」

福地弁護人=「すると警察は何回行ったか分からないんですか」

証人=「はい」

福地弁護人=「警察が捜索に行って、無かった所から見つかったということは、あなたの先ほどの想像では警察の捜索した後で誰かがまた置いたんだろうと、こういう風になるのですね」

証人=「いや、なるんではありません。そういうこともあるかも知れません、あるいはそこにずっと捨てられて置いてあって、誰も発見しないで、そのままの状態であったかも分からない、この二つのことが考えられます」

福地弁護人=「警察が捜索に行っても見つからなかった、そういう場所に時計が置いてあったんでしょうか。あなたは時計がどこにあったか、後で見に行ったんでしょう」

証人=「はい」

福地弁護人=「警察が何人かで捜索に行って見つからない場所ですか」

証人=「現実には見つからなかったんだろうと思います」

福地弁護人=「現実には警察が行った時に見つからなかったということだが、そういうことを聞いてるんじゃないですよ」

証人=「はい」

福地弁護人=「警察が何人か行って捜索をして見つからないような場所に実際は時計は置いてあったのか」

証人=「そういうことを仰られても私にはお答え出来ないです」

福地弁護人=「しかし、あなたはどこにあったか知ってるでしょう、見に行ったんでしょう」

証人=「現実に、とにかく見つかっていないからやむを得ないです」

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裁判長=「そういうことを聞いてるんじゃない、あなたは見に行った時にここから出たというところは見たんだね」

証人=「はい」

裁判長=「警察が何回行ったか知らないが、とにかく捜しには行った、それで見つからなかったと」

証人=「はい」

裁判長=「あなたから考えて、警察官が捜索に行けば、おそらく普通の捜索をしてれば見つかったであろうと思われるようなところからそれは発見されたかどうか、それも想像みたいなものだが、そういうことです。あなたから見ればこんな物を警察が捜索に行った時に、もしそこにあったとしたならば、捜索で発見されないわけはない、発見されたに違いないと思われるようなところから発見されたのかどうか聞いているんです」

証人=「普通の状態であったとすれば当然見つかってもいい場所だと私は思います。指定された場所に遠くない場所ですから」

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福地弁護人=「普通の状態であったならばと、あなた言いましたね」

証人=「はい」

(次回へ続く)

腕時計発見現場(写真右端"ト"印)。

数年後の同現場。写真三点は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。