【公判調書2675丁〜】
「第五十一回公判調書(供述)」
証人=長谷部梅吉
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山梨検事=「この書面はあなたの作成したものに間違いありませんか」
証人=「間違いありません」
山梨検事=「これは六月二十日午後七時五十分川越警察署分室第一号取調室で関源三立会いの上、取調開始したと、こういう文言のものですが」
証人=「私は口頭だけでこういうものは作成したという記憶はなかったのですが」
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裁判長=「弁護人、どうですか。出されることを予測してこの証人に尋問されることはいいと思いますが」
石田弁護人=「今突然示されたものですから、記載内容を全然知らなかったものですから」
裁判長=「では、ご覧になって、この証人にこの点について聞くことがあれば聞いておいたらいかがですか、再度呼出すのも何ですから、この点について聞くことがあれば」
石田弁護人=「はい、それではちょっと時間を頂きまして、後ほど質問するかも知れません・・・・・・」
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山梨検事=「この報告書によりますと、自供する前に、自供直前被告人が、関さん済まなかったよ、と言いながら関部長のひざに泣き伏したので本職は石川が、関さんに何でも打ち明けて相談に乗ってもらえよ、と言って二人だけにしたほうがいいと思って外に出たということですね」
証人=「それを見せられて思い出したわけです」
山梨検事=「間違いない」
証人=「はい」
山梨検事=「先ほどあまり泣いたような記憶ないという証言だったようだけれども」
証人=「泣いたこともあったと言ったと思いますが」
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裁判長=「否認してる時は泣いたことがないようだったが、自白のような時には泣いたこともあったような、はっきりした証言じゃなかったけれども」
証人=「ええ、そうです」
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橋本弁護人=「それでは、先ほどの証言ですと関巡査部長はあなた方の調べ室に来たわけですね」
証人=「はい」
橋本弁護人=「それで関さんとあなたと被疑者と三人ですか、その場は」
証人=「三人でございますね」
橋本弁護人=「それで、その報告書によると石川君が関さんに対して泣き伏したと」
証人=「はい」
橋本弁護人=「そういう風に書いてありますけれども、その場はあなた見ているんですか、泣き伏しているところを」
証人=「見ております」
橋本弁護人=「先ほどの証言ですとあなたは、三人説の自白を始めた時は非常に被告人は落ち着いて冷静だったというようなことを言ってましたね」
証人=「そうだと思ってましたが。そういう風に申上げました」
橋本弁護人=「どっちが本当なんですか」
証人=「そういう風に私は思っておったんです」
橋本弁護人=「泣き伏したかどうかは今では思い出せないんですね」
証人=「ただ、自分の作成した報告書を見まして、初めて、こうだったと記憶を呼び起こしたんです」
橋本弁護人=「その報告書によりますとあなたは被疑者が自供するのは逐一は見てないんですね」
証人=「ええ、そうです、全部は」
橋本弁護人=「外に出て立っているんですね」
証人=「ここの話をするところから廊下はガラス戸なんです。それで、間違いがあってはならないというので、廊下のところにおったから話は逐一聞こえるんです。立ち会っておらなくても聞こえるんです」
橋本弁護人=「その場は見えるんですか」
証人=「見れば見えますけれども、私はそこのところでは泣き伏したところは見ておりますけれども、全部を見ておったというわけじゃありません」
橋本弁護人=「泣き伏すというのはこれはどんな状況ですか。どういう場所でどういう風に」
証人=「あぐらをかいている関部長のひざに本人がうつ伏せになるようにして」
橋本弁護人=「関さんに寄りかかるように」
証人=「体にかかるというよりも、あぐらをかいておった、そこに上半身を倒したと」
橋本弁護人=「畳の上に泣き伏したんですか」
証人=「そうならないでしょう、畳の上にあぐらをかいていた、その上に泣き伏したんですから」
橋本弁護人=「体を全部倒したんじゃないんですね。あぐらをかいたまま」
証人=「あぐらをかいておって対座していたわけです」
橋本弁護人=「その間に何かあるわけですか。テーブルか机か」
証人=「座机があったんですね。関部長は対面席じゃなくて横におったと思うんですね、初めの位置は。横にいたところに石川君が寄りかかるように」
(続く)