アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 848

【公判調書2646丁〜】

                   「第五十一回公判調書(供述)」

証人=長谷部梅吉

                                           *

橋本弁護人=「青木警部が主で、あなたがそれに補助なんですか、そういう形でついておって調べを続けておったんですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「そこにその関さんが入って来たというのは何か理由があるんでしょうか、その理由を聞きましたか」

証人=「聞きません」

橋本弁護人=「被告人の警察官調書を見ますと恐らく八割くらいは青木警部作成の調書なんです。その中に関巡査部長の調書が二通だけ介在しているわけですね、そうするとどうして関さんが取調べに関与したのかその理由を知りたいわけですがね」

証人=「それは他の者にお聞きになって頂きたい。私の方は応援を求めたわけでも何でもなくて、たまたまそれで調書が青木警部が普通取っておって、それで関部長の調書が一通しかないと、これは不自然ではないかというご質問らしいんですが、この青木警部というのは捜査主任官ですね、その取調べの方の主任官になっております最高の指揮官でございますね。ですからほとんどあの方がやっておるんで、ですから青木警部の調書がみんな出来ているんじゃないかと、たまたまその時には関部長の所へ自供したら自供した時を、また今度は自供しない警部を連れて来て調書をとるというと被疑者に対してもうまくないと、それで自然の状況で自供された者が細かいところはとると、それで不自然のところがあると一人でやったんじゃなくて仲間があるんだと、その時言ったからそのままの調書をとるんで、普通なら私のところで昼間なら追及して第一回目の自供調書をとって、それで第二回目の何で改めるわけですね、被疑者からとり直すわけです、三人というのは誰だと言ってそれが夜分であるから取調べをやめてしまって、それであとを青木警部に引き継いだと。だから関部長の調書は一通で最初自分に自供したその調書をとっただけで、あとは替わって専門の主任に譲ったと、こういうことですね」

橋本弁護人=「あなたの記憶はそういう記憶ですか」

証人=「はい、そうです」

橋本弁護人=「私が不審に思っておるのは青木さんと長谷部さんという二人が取調べにあたっておったわけですね、従前から」

証人=「はい」

橋本弁護人=「突如として、突如としてと見えるんですがね我々には。関さんが入って来て取調べに関与して、そして調書を作っている。関さんというのは階級から見るとあなた方よりずっと下の巡査部長ですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「ですから何か特別の理由があって関さんを関与せしめたんではなかろうかと」

証人=「その何は関部長は石川君の村の近くに住居を持っておって近かったと、それから野球のコーチか何かをしてくれた部長さんなんだと、だから関さんに話すからと、こういう風なことを言われたと思いますね」

橋本弁護人=「石川君の方から関さんに話したいということが予め告げられておったんですか」

証人=「そういう風に記憶しております」

橋本弁護人=「あなた方が、じゃ関さんに来てもらおうということで呼んだわけですね」

証人=「私は石川君の方からそういう話をされてそれで食事で、夕飯を替わって、それで夕飯の前に一度調べてる者がおるわけですね、それで交替した時に前の人にその話をしているということを、これは私あとで聞いた話ですよ、この関部長さんが野球のコーチをしてくれたり村にいて顔なじみだからその人に話すからと、こういうことを言ったと、それは私、知らないんですよ、その言われたことを、前の時それで私と関さんで調べておった時にたまたまその話が出たと(注:1)」

橋本弁護人=「そうするとあなたとしては関巡査部長がどういう経過で取調べに関与するに至ったかは正確には知らないということですね」

証人=「そうでございます」

橋本弁護人=「結果としては関部長と一緒に取調べにあたったけれども、知らないと、そういうことですか」

証人=「取調べにあたったと、初めから関部長とあたったんじゃなくその瞬間たまたま関部長に話すというそれからは私が関部長と一緒になったわけですね」

橋本弁護人=「夕食後自白をしたという日、その日初めて関と一緒にあなたは取調べにあたったわけでしょう」

証人=「そうでございます」

橋本弁護人=「それ以前はないんでしょう」

証人=「ないです」

橋本弁護人=「そういう階級の下の人が階級の上の人の了解を求めないでいきなり取調室に入って来て被疑者の取調べを勝手にするということはあり得ないんでしょう」

証人=「あり得ないです」

橋本弁護人=「誰か上層部の指示があって初めて取調べに関与できるんでしょう」

証人=「はい」

橋本弁護人=「それから関巡査の作った調書は一通であると記憶しているんですか」

証人=「一通ではなかったかと思って、それですぐにこれは翌日主任官の青木警部に引き継いだんではなかったかと記憶しておりますが」

橋本弁護人=「裁判所には少なくとも二通、関名義の調書が提出されておりますからね」

証人=「そうでございますか」

橋本弁護人=「二通以上作成したんではないかと思いますがね、二通ぽっきりかあるいはそれ以上あるかどうか知りませんか」

証人=「私はその時だけだと記憶にあるんですけれども」

橋本弁護人=「それからその最初の自白をした晩、あなたと関さんと二人だけだと言いましたが」

証人=「私そう記憶しております」

橋本弁護人=「調書に立会人の署名がありますね」

証人=「はい、あります」

橋本弁護人=「供述調書によく立会人と署名しますね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「あの立会人というのはどういう人を指すんですか」

証人=「そこに同席した者ですね」

橋本弁護人=「同席をしてない人は立会人ということで署名するということはありませんか」

証人=「はい、効力ないものですね、それは」

橋本弁護人=「そうするとその最初の第一回の調書の立会人は誰だったんですか」

証人=「私が立会人」

橋本弁護人=「関さんが録取してあなたが立会人ですか」

証人=「そうじゃなかったかと思うんですがね」

橋本弁護人=「記憶はどうですか」

証人=「そう記憶しております」

橋本弁護人=「ほかの巡査が立ち会ったということ、つまりその席にいたという記憶はありませんか」

証人=「記憶ないですね、まあ出はいりはしますけれども立会人として正確な何はまあお茶を持って来たとか、あるいは電話ですとか言って呼びに来るというので入って来る者も時にはあるでしょう」

橋本弁護人=「そういう人が立会人になるということはないですか」

証人=「ありません」

橋本弁護人=「立会人という人は録取者と同席して被疑者の供述を終始一貫聞いておる人、そういう人がなるわけですか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「私の了解する限りには関さんの自白調書が六月二十日付であるんですがね、これは三人で善枝さんを殺したという趣旨のことが書いてある調書ですが、この立会人は熊谷署勤務の巡査部長清水輝雄とあるんですがね」

証人=「それは第一回の供述調書にですか」

橋本弁護人=「いや、それは第一回になるかどうか私の方には知りませんが裁判所に出されておる関巡査部長の作成したものとしては一番初めのものです。もっと早いものはそれは警察にあるのかないのかは私は知りませんが」

証人=「それは知りません」

橋本弁護人=「いや、清水輝雄という人の署名があるようですが、清水輝雄という人を知らないんですか」

証人=「いや、知っております」

橋本弁護人=「この人が立会人として署名しておるということはつまりこの人が取調べに立ち会ったということなんでしょう」

証人=「もちろん署名してあれば立会人となって立ち会ったと思いますよ」

橋本弁護人=「そうするとあなたは今自分が最初立ち会ったんだと、だから自分が立会人として署名捺印をしたと思うということを言われましたがね、清水輝雄さんだったんじゃないんですか」

証人=「いや、それはですから調書が一通であればそういう間違いないけれども二通あったとすれば私は先ほど申し上げた通り関部長は作成は一通ではないだろうかと、従って立会人はほかの者がなるわけないと、こう私は記憶しておりますが」

(続く)

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(注:1)原文のまま引用しているのだが、ここでの証人の証言は調書で読む限り意味がわかりづらい。証言そのものはこの通りであろうが、速記及びその速記録を反訳する過程において句読点の打ち方を誤ってしまってはいないだろうか。特に読点が連続して打たれている点に問題があると思われるが、勝手に変更するわけにもいかず非常に悩ましい問題である。