(ドキュメント狭山事件=佐木隆三著。私の所有する本は焼けがひどく、煙草の煙に燻され、さらに何度となく酒をこぼし、おでんの汁もしみている。予備としてもし古本屋の均一台で見つけたならば購入しておこう)
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『昭和四十九年五月二十三日の、東京高裁における第七十五回公判で、石川一雄は弁護人青木英五郎の尋問に、次のように答えている。
青木弁護人=「それから長谷部警視の言ったことを信用した根拠について、長谷部という人を非常に偉い人だと思ったと言ったね」
石川被告人=「はい」
青木弁護人=「それはどういうわけなのか」
石川被告人=「それは狭山から川越に行って、ほとんどの警察官が長谷部さんにペコペコ頭を下げるんですが、だから、そういう関係で、それでこの人は偉いんだからって遠藤さんなんかも言うから、それで自分もそう思ったですね、当時は。これは長谷部さん、偉いんだな、と思って。警視さん、警視さんと言っていたですね」
青木弁護人=「裁判官より偉いと思ったのは、どういうわけなんだろう」
石川被告人=「結局自分が三人でやったと言ってから長谷部さんが、お前は一人でやったと言わなければ死刑にできるんだぞと、そういうことを言われたですね。だから裁判官より偉いと思ったですね、死刑にできるんだから」
青木弁護人=「それは一審の最後までそう思っていたのかね」
石川被告人=「一審の最後って、ここにきてからもしばらくそう思っていたですね」
青木弁護人=「控訴してからもしばらく」
石川被告人=「ええ、そうですね」
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石川一雄は、「裁判官より偉いと思った」長谷部梅吉と、男の約束をしたというのである。(ドキュメント狭山事件=佐木隆三)』
この偉い警視は言う。やったと言えば十年で出してやる。・・・中田善枝殺害を自供すれば刑期は十年で済むという意味である・・・。
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【公判調書2619丁〜】
「第五十一回公判調書(手続)」
「第五十一回公判調書(供述)」
今回、警察官退官後に「教本 アリバイ崩し:埼玉県警刑事三十年の告白」なる書籍を執筆している長谷部梅吉氏が証人として召集された。果たして氏の答弁から何が引き出されるか見てゆきたい。ちなみに、長谷部氏の著書は現在入手困難である。
(続く)