アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 820

原文(公判調書)では、丸括弧(まるかっこ)内に書かれた補足説明や注記に、さらに同種の丸括弧が入れ子となっての表記が多々見られる。言語の記述に使用する記述記号の一つである括弧類には種類があるため、これらをその使い分けルールにのっとり使用し、丸括弧内に再度丸括弧を使用することを避けることは出来ないか、と考えてきた。これは丸括弧の中に再び丸括弧を入れる表記は日本語の文章として御法度だと、むかし何かの本で読んだ気がするわけだが、今回よりそのまま引用することとする。理由は、私自身がなるべくこういったことで悩みたくないからである。

例を挙げるとこのような丸括弧の使い方である。そして二枚目の例をよく見ると"写真"の"写"という字が脱落していることに気付く・・・。

【公判調書2534丁〜】

                   「第四十九回公判調書(供述)」

証人=岸田政司 

                                            *

橋本弁護人=「(前同押号の五の3の石膏を示す)その石膏の破損痕の一つについては先ほど証言を聞きましたが、もっと破損痕があるようなことを言いましたね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「どこにあるのですか」

証人=「竹の葉模様の踵寄りに三本の横線がありますが、その外側のところにあります」

橋本弁護人=「それが破損痕であると認められる根拠はどこにあるのですか」

証人=「ここ(右石膏の右三本の横線付近の外側端を指示)です。この棒状というか、この線がそうだと私は信じています」

橋本弁護人=「その石膏に側縁が出ていますか」

証人=「はっきりしないけれども出ています」

橋本弁護人=「(前記鑑定図第二図を複写した写真を示す)その側縁の出ている部分をその(一)(3)の写真に記入して示してください」

証人=「はい(証人は同写真の左側に赤線を記入し、且つ写真の下に"朱示線部は側縁部(一)(3)左側"と記入した)」

橋本弁護人=「側縁というのは地下足袋の底の外周線ですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「それがどうして破損痕と結び付くのですか」

証人=「ここ(右五の3の石膏上の右赤線中点線の部分に相当するところを指示)が破損しているわけですが、これ(同石膏上の右赤線-点線部分も含む-に相当するところを指示)が側縁で、側縁が破損していなければ側縁は直線につながっていると思います。ところがそうでなく外側に湾曲しているから破損しているというわけです」

橋本弁護人=「そうすると、あなたが今側縁として写真に示した赤線が側縁が破損していなければ真っ直ぐに伸びるところが弓状に曲がっている、だからそこが破損している、というのですね」

証人=「そうです」

                                            *

裁判長=「そうすると、証人は五の3という現場の足跡の石膏から判断すれば、そういう側縁部の破損があるから、おそらく現物の地下足袋にもそういう風な側縁部の破損があるだろうという判断をしたわけなのですか」

証人=「そうです」

                                            *

橋本弁護人=「五の3の石膏の、あなたが竹の葉模様だという部分の左上の方に、やや隆起した固まりがありますね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「それも側縁部ですか」

証人=「これは側縁部ではないでしょうね。これは土塊の関係か何かによってこういう印象が出たのではないかと思います」

橋本弁護人=「あなたが先ほど指摘した側縁だという部分と同じなのではありませんか」

証人=「先ほどの側縁の部分にも泥か何かが付いている状態で印象されたのだと私は思います。土塊か何かが付いていて印象されたから、そこの側縁部がグズグズとなったと思うわけです」

橋本弁護人=「側縁部分が隆起しているのは土塊か何かが付いたせいであろう、というわけですか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「あなたが指摘した側縁部分であるという部分が側縁であるという根拠は何ですか。なぜ石膏のその隆起部分が側縁部分に当たると言えるのですか」

証人=「というのは克明に言うと、破損して側縁の棒状のものが外側に弓状になった場合には、その内側に縫付地下足袋特有の縫った跡らしいものが現われるわけです。それが見受けられるから私の方ではこれがそうですというわけです」

橋本弁護人=「一般論として、側縁部が外側に大きく破損するとその内側のゴムとの間の溝が広がるということになるわけですか」

証人=「伸びた場合には広がりますね」

橋本弁護人=「(昭和三十八年六月十八日付警察技師関根政一、同 岸田政司連名作成の鑑定書(記録第四冊第一、一〇三三丁以下)の鑑定図第八図を示す)その右側の写真に破損痕が写っていますね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「F、E、Dという三つの線で指示されているのが言われるところの破損痕でしょう」

証人=「はい」

橋本弁護人=「Fの線が側縁部分になるわけですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「Dの部分は本底の外側ですか」

証人=「そうですね」

橋本弁護人=「F線とD線で囲まれた中間は溝でしょう」

証人=「はい」

橋本弁護人=「縫付地下足袋の場合、この部分に破損が生ずれば溝ができることになるわけですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「その五の3の石膏には溝が現われていないのではないですか」

証人=「現われているではないですか」

橋本弁護人=「現われていますか」

証人=「はい。側縁のゴムが切れている場合、写真ではその側縁の棒状のものが平面的になっていますが、石膏ではそこが下がってしまっているので溝が平らに見えるようになっているわけです」

橋本弁護人=「つまり側縁のゴムが歪んでいるのですか」

証人=「ええ。要するに破損した側縁は地下足袋を踏んだときに上へ上がってしまっているので石膏ではこうなっているわけです」

橋本弁護人=「(前同鑑定書の鑑定図第五図の右側(一)(3)の写真を示す)その写真にJという符号があり、その写真説明では地面のひび割れに石膏が流入して出来た跡であるとなっていますが、その通りですか」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「今その石膏を見てもそう言えますか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「何を根拠にそう言えるのですか」

証人=「こういうことは経験によると多々あります」

橋本弁護人=「ひび割れと判断している根拠はどうなのですか」

証人=「経験による判断もあります。この足跡全般的に見ても、これがひび割れだと解釈しました」

橋本弁護人=「地下足袋の欠損の跡ではないのですか」

証人=「欠損の跡ではないと私は信じます」

橋本弁護人=「それから、同じ写真にA、B、C、F、Gと符号が付いていて、それは土塊痕跡だと説明されていますが、土塊痕跡と判断した根拠はどうですか」

証人=「石膏には現在も泥が残っていますね。経験上こういうものは土塊によって出来たものであると分かるわけです」

橋本弁護人=「同じ写真にK、Lという符号がありますが、それは何を示すのですか」

証人=「横線模様のところに泥が詰まっているからこうなったと言っているのです。平らなものならこうならないんだということを示しています」

橋本弁護人=「泥が詰まっていなければ横線模様が出るわけですか」

証人=「詰まっていなければ出るわけです」

橋本弁護人=「そうすると、詰まり方に特殊性があるのですか」

証人=「平らになるほど詰まっていないということを言っているわけです」

橋本弁護人=「周囲の、我々から見ると全く同じような他の痕跡とどうして区別出来るのですか」

証人=「見た目でそういう風に見えたわけです」

(続く)