【公判調書2091丁〜】
「捜索差押調書」
被疑者石川一雄に対する、強盗強姦殺人、死体遺棄被疑事件につき、本職は昭和三十八年六月十八日小川簡易裁判所裁判官、瀬尾圭二の発した、捜索差押許可状を被疑者の父石川富造、同兄石川六造に示して、左の通り捜索差押をした。
昭和三十八年六月十八日
狭山警察署助勤 埼玉県警察本部刑事部捜査第一課
司法警察員 警部 小島朝政
○捜索差押の日時
昭和三十八年六月十八日 自午前五時五十五分
至午前八時 三分
○捜索すべき場所 身体又は物
石川一雄方居宅およびその周辺一帯
○差押えるべき物
本強盗事件の賍品である
一、ダレス鞄一個
二、シチズン六型金色腕時計一個
三、パイロットスーパー万年筆一本
四、ビニール、チャック付財布一個
五、その他本件に関係あるもの
○捜索差押の立会人
被疑者の父石川富造 同兄石川六造
○差押した物
別紙の通り
(別紙)
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捜索差押のてんまつ①
一、捜索差押の補助者
警部 芝岡清吉
巡査部長 梅沢 茂
同 福島英次
巡査 吉沢 実
同 飯野源治
同 高島泰造
主事 町田 勇
巡査部長 吉田良叙
巡査部長 井上熊造
同 清水輝雄
巡査 春山菊雄
同 山崎和夫
主事 小堀二郎
二、捜索差押場所の見取図および写真添付
本捜索差押の状況を明らかにするため現場見取図一葉および現場写真四十四枚を作成して、本調書の末尾に添付する。
(現場見取図)
三、捜索差押の状況
1、玄関は、間口一間奥行三尺のコンクリート土間で、東寄りに西向きになって、木製下駄箱一個が置いてあった。この中を捜索したが、差押すべき物を発見することができなかった(添付写真第四乃至第七参照)。
(写真第四)
(写真第七)
2、玄関寄付き四畳半の間
同室は畳の部屋で家具はない。室の西側鴨居に東向きに造り付けの神棚がある。神棚の下東北隅畳上にテレビ一台が置いてあった。これらの場所を捜索したが差押物は発見できない(添付写真第八乃至第九参照)。
(写真第八)
(写真第九)
3、奥勝手場寄り六畳の間
この室は、南側三尺が板張りとなっていて、畳の場所は四畳半である。室の西側南寄りの板壁に数本の釘が打って、冬物衣類(オーバー背広等)数枚が吊るしてあった。東側はブリキ鑵、ダンボール箱、タゴ桶、炬燵櫓などが雑多に積み重ねてあった。これらの中を順次捜索したが差押物はなかった(添付写真第十乃至第十二参照)。
(写真第十)
(写真第十二)
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○引用した資料によれば、かなり徹底した家宅捜索が行なわれていることは明らかである。我が日本の誇る警察の捜査に落度はなかろう。それ故に、なぜ完璧な捜索後に被告宅の鴨居から、被害者の万年筆という本件に直結する重大な証拠物が見つかったのか、どうにも人為的な策略が垣間見えるのである。