アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 893

狭山事件捜査本部は当初この事件について次のような見解をもっていた。

同本部は犯人がさる三日午前零時過ぎ佐野屋付近において、殺された善枝さんの姉登美恵さんと離れて会った時、登美恵さんとの応答に使った言葉は明らかに埼玉訛りがあった。また中田さん宅へ投げ込んだ脅迫状はたどたどしい文字や誤字がたくさんあった。この中に「西武園」という文字だけが正しく書かれていた・・・これらの点から犯人はあくまで土地カンのある者か土地っ子と推定している。

当局が犯人は善枝さんと顔見知りとみているのは、善枝さんが顔見知りでなかったなら、なにも学校帰りに人通りの少ない第一現場と見られる山林内に入っていなかったのではないか。それを山林内に入って行ったのは、やはり犯人と顔見知りではなかったかと見ているわけだ。当局の四日夕方から夜にかけての聞込み捜査の焦点は善枝さんの通学コースである入間川と自宅間、ことに入間川と殺された現場の間に絞っているところから犯人は善枝さんの通学コースの中でも、特に入間川と現場間の地理に詳しい者としている(狭山差別裁判第三版=部落解放同盟中央本部編より引用)。

 

【公判調書2784丁〜】

(五月二十五日、被害者の教科書・ノートが雑木林と畑の境界の溝で発見された。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用)

                  「第五十三回公判調書(供述)」

証人=関 源三(五十五歳・飯能警察署勤務、警部補)

                                            *

宇津弁護人=「六月の二十七日頃、教科書が出たことを聞いたというが、何らかの必要があって特に詳しく調べてみたとか人に聞いたことがあるかも知れないけれども、教科書が発見されたということを六月二十七日に聞いたというのはちょっと不正確でしょう」

証人=「二十七日というのは、川越へ行って幾日かしてからだと思うので、六日か七日、必ず七日とは言えません」

宇津弁護人=「教科書が、いわゆる狭山時代発見されたということで、新聞記者なんかも大騒ぎしてたんじゃないですか」

証人=「今私どもが考えても教科書の出たのは幾日か、本当のことははっきり分からないです」

宇津弁護人=「何日に発見されたかをあなたから聞き出すことよりも、客観的には警察に嘘がなければ五月二十五日に教科書類が発見されたことになってるんです、訴訟の資料の上でね。だからその日に知ったかどうかは別として、その頃、つまり狭山時代とも言いますか、その頃教科書が発見されたんだということを、あなたが当然知っていたのではないかと思うので聞いてるんです」

証人=「その発見されたというその当時は、私は分かりませんでした」

宇津弁護人=「あなた、石川君と前から知り合いだということで、この事件の内容については関心を持っておられたんでしょう」

証人=「そうです、私、友だちですから」

宇津弁護人=「それから、狭山時代も川越に行ってからも上司の指示でいろんな、部分的ではあれ、取調べにも捜査にも従事されたようですね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「ところであなたは、六月の二十一日かどうかは別として、青木さんたちが石川君に鞄を捨てた場所を聞いていた時に、服を泥だらけにして、石川君のところに現われたことがあるのではないですか」

証人=「泥だらけということはございません」

宇津弁護人=「しかし、青木さんの取調べの時に立会人になっているはずの遠藤さんという人は、別なことで法廷に来られて、あなたが泥だらけになって来たようなことを述べてるんですが」

証人=「泥というのは絶対ないです。オートバイで砂利道を走って来るとほこりが、まっ白になるんです」

宇津弁護人=「仰る通り泥とほこりは違うね」

証人=「ですから泥とほこりは違うんです」

宇津弁護人=「私の聞いているのは、違いに立って、あなたがお尻とか手の方も泥だらけになって、こんなに捜しても無かったぞというようなことを言いながら青木さんたちの所へ来たことはなかったかと聞いてるんです」

証人=「泥だらけということはございません」

宇津弁護人=「それから次の質問ですが、石川君が取調べをしている方々から万年筆のことを聞かれていた時に、あなたもちょっとその側にいたということがありますか」

証人=「私も、調べてる時、出たり入ったりしてましたから、その時、あるいは万年筆なり鞄の取調べをしていたかどうか分かりませんですが、そうしたことははっきり記憶ないんですが」

宇津弁護人=「あなたは石川君に、弟の友だちの誰かに、上がっていって持って来てもらおうかという趣旨の声をかけたことはないですか」

証人=「いや、ないです」

                                            *

裁判長=「ちょっとわからないんですが、どういう質問ですか」

宇津弁護人=「被告が述べていることなんですが、被告に、弟の友だちに持って来てもらおうかと、声をかけたことがないかということです」

裁判長=「弟のね」

                                            *

宇津弁護人=「はい。とにかく、万年筆のやりとりの時に、たまたま入って耳にしたことがあるのですね」

証人=「そういう話があったとも言い切れないし、ないとも言い切れない、よく分からないんですが」

宇津弁護人=「万年筆の内容について聞くのはあまり深入りしませんが、万年筆に関してやりとりしている時に、たまたま、いて、耳にはさんだことがあるのでしょうか」

証人=「そういうことがあるかも知れません」

宇津弁護人=「それから本件発生当時のあなたのお住まいですね、それと石川君の家との距離はどの程度だったんですか」

証人=「直線にしますと二百メートルか、まあ、二百か二百五十メートルぐらいです」

(続く)