アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 476

【公判調書1583丁〜】              

                            「狭山事件の特質」

                                                                          中田直人

第三、本件の特徴

3.『本件の関係者の中に、自殺者が続出したという事実をも注意しておかねばならない。本件発生直後、農薬を飲み井戸に飛び込んで自殺した奥富玄二は、もと被害者中田善枝の家で働いていた作男であった。また本件捜査中に田中登なる人物が自殺している。そして、脅迫状による二十万円を届けに行った被害者の姉、中田登美恵もその後自殺した。また、本件捜査において、一つの焦点となった石田豚屋の兄、石田登利造も自殺者の一人である。

奥富玄二について言えば、中田家の作男であり血液型はB型で、その筆跡も脅迫状のものと似ていると伝えられた。彼は本件発生直後に、自分の結婚を目前にして自殺したのである。長谷部証人は「奥富は本件とは全く無関係であった」と証言する。しかし長谷部がそう断言しながら「奥富について何らの捜査もしなかった」と証言するのは奇異の感を持たせるところである。無関係であるかどうかを確かめる捜査さえしなかったというその証言は、警察はもはやいかなる意味においても死者には用はなく、「生きた犯人」を捕まえなければならないという事態に追い詰められていたことを物語ってはいないだろうか。本件重要参考人であった中田登美恵が自殺したことは既に述べたが、同様に増田秀雄証人、小川松五郎証人がともにその後死亡している。当審で証言に立った原検事は、彼が捜査ならびに一審立会いの責を果たしたのち死亡した増田秀雄について、その死亡時期などについてよく了承していたが、この点にはある興味を覚えさせられる。そして今は、この原検事もまた他界の人である。ともあれ、自殺者の続出、重要証人の死亡といった本件に関する隠惨な影を取り払うためにも、本件は徹底的に究明されなければならない』  

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4.『本件には、一見犯行と被告人を結びつける証拠がかなり存在する。これもまた考えてよい特徴である。自白それ自体が不合理であり、客観的事実と食い違う問題を持っているにもかかわらず、常識的には動かぬ証拠と考えられるものがいくつか存在する。例えば目撃者があり、足跡があり、筆跡があるとされている。そして、一審判決が強調するように自供によって証拠物が発見されたと言われている。しかし、本件には不合理なこと、奇妙なこと、どうにも理解出来ないことがいっぱいある。表面、大筋ではいかにも整っており証拠もあるように見える。こういう事件が刑事事件では一番危険ではないだろうか。こういう場合にこそ最大の注意と曇りのない証拠評価が必要なのではなかろうか。我々の弁論は当然このことに最も大きなウェイトが置いて進められる』(続く)

*さて、本日はおにぎりと酒をバックに詰め府中へ向かう。今年初の運試しは東京競馬場で行うのだ。