アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 579

【公判調書1779丁〜】「事実取調請求書」

第四、書証および証拠物たる書面(書面の記載内容等詳細は、昭和四十三年八月二十七日付事実取調請求書のとおり)

【  】=書証および証拠物たる書面の標目。

      ○=証明すべき事実、証明力を滅殺し、または補張(注:1)する証拠。

【1】昭和三十八年五月五日付読売新聞朝刊十四版十一面「前に別の誘かい計画  あて名日付書き直された脅迫状」という見出しの記事。

    ○=当審第七回青木一夫証言

【2】同年五月七日付読売新聞朝刊十四版十一面、

(1)「疑惑深まる"自殺した青年"前後の行動追及、似た筆跡、血液型も一致」という見出しの記事。

   ○=当審第八回長谷部梅吉証言。

(2)「別に三人の容疑者、水色シャツの男も」という見出しの記事。

   ○=当審第十一回諏訪部正司証言。当審第十二回将田政二証言。

【3】同年五月七日付読売新聞夕刊四版十一面、

(1)「しろうとではない荒縄の結び方  新たな手がかり」という見出しの記事。

   ○=竹内狭山署長は、五月七日午前十一時からの記者会見で、「善枝さんをしばっていた荒縄や綱引(注:2)はしろうとにはできない特殊な結び方をしている」「死体発見現場付近の山林三ヶ所から新たに牛乳ビン、コモなど六、七点を発見、指紋その他を調べている」等と発表した旨の報道記事がある事実。「手拭やタオルの結び方は、取調官から教えられたが、じぶんの日ごろの結び方とは違っていた」旨の被告人の公判廷供述。

(2)「玄二さんの血液は、七日BIMN型とわかり」の記事。

     ○=当審第八回長谷部梅吉証言。

【4】同年五月六日付毎日新聞夕刊、

(1)「キメ手  米屋の手ぬぐい」等の見出しのある記事。

    ○=善枝さんを後ろ手にしばっていた布は五十子貞作方で得意先に配ったものであり、川越団扇会社が作ったこと、奥富孝志君が体育大会の応援に行く途中、沢の自転車屋前で善枝さんと出会ったというのは確実とみられること、死体発見現場から数百メートルはなれた林の中に堀立小屋が発見され、中に草刈りガマと荒ナワ、エロ雑誌、ヌード写真、自動車運転免許甲法令集、ペン習字帳、絵本などがあり、カマと荒ナワは本部員が持ち帰ったこと等の報道記事がある事実。

(2)「奥富玄二は、被害者中田さん方で作男をしたことがあり、事件と関係があるのではないかと本部で調べている」旨の記事。

   ○=当審第八回長谷部梅吉証言。

【5】同年五月七日付毎日新聞朝刊「自殺した元作男」という見出しの記事。

   ○=当審第八回長谷部梅吉証言。

【6】同年五月七日付毎日新聞夕刊「ナワの結びに特徴」という見出しの記事。

   ○=死体の縄には、よじったような特殊な結び方の特徴がある旨の報道記事がある事実。被告人の公判廷供述〈前記3(2)の趣旨で〉

【7】同年五月六日付朝日新聞夕刊三版七面、

(1)「新事実つきとめる、下校中にも目撃者、容疑線上に三人の男」という見出しの記事。

   ○=特捜本部は、中田善枝さんの自宅に近く、三日未明身代金引渡しのさい、捜査当局が遠まきにした警戒網の中に住んでいるAに疑いが濃いとしているが、一日午後、善枝さんが自転車に乗って帰宅する姿を中学生奥富孝志が見かけているのを聞込み、また、日本手ぬぐいは、五十子米穀店が得意先に配ったものであり、A宅にもこの手ぬぐいが配られていることを・・・(判読不能・注:3)、手ぬぐいといっしょに、堀兼農協が農産物を出荷している東京築地の丸京青果の荷札が死体から見つかったので、有力容疑者Aらとの関連について調べている旨の報道記事がある事実。

(2)農薬投身自殺した奥富玄二につき捜査本部で調査している旨の記事。

   ○=当審第八回長谷部梅吉証言。

【8】同年五月七日付朝日新聞朝刊十二版十五面「情報の裏付け急ぐ  三人の男  決め手つかめず」という見出しの記事。

   ○=当審第八回長谷部梅吉証言(奥富玄二の血液型は県警本部鑑識課でB型と判明、さらに警察庁科学警察研究所へ送って精密検査するという内容)

【9】同年五月七日付朝日新聞夕刊三版七面「"疑いの男"一人姿消す  狭山の女高生殺し  捜査進まず」という見出しの記事。

   ○=「特捜本部は死体についてあった布きれについていた東京・築地市場の丸郷青果の荷札は、その後の調べで地元の堀兼農協が農作物の出荷用に主として上赤坂地区の農家に配っているもので、農家は使わないで残った分は畑を区切った時の目印などにしたりするほか、農家以外にも多少流れていることがわかり、犯人が地元にいることの一つの裏付けがとれた」という報道記事がある事実。

【10】「週刊文春」(昭和三十八年)七月八日号・三十四頁以下(「石川一雄自供発表の夜」と題する記事)。

   ○=六月二十五日、中刑事部長が「石川が単独犯行と自供した」と発表したが、その記者会見のあった日の夜、A紙の記者の耳に「警察が善枝さんの万年筆と時計を見つけた」との重大な情報が入ってきた旨の記事がある事実。「六月二十八日ごろ取調官から腕時計を見せられた」旨の被告人の公判廷供述。

【11】昭和三十八年六月十七日付浦和地方裁判所裁判官秋葉雄治の決定。

   ○=捜査当局が再逮捕後、弁護人に被告人との接見を許さず、弁護活動を妨害した事実。

                                          *

以上が弁護側による「事実取調請求書」第四、 書証および証拠物たる書面【1】〜【11】である。次回から、この「事実取調請求書」に対する東京高等検察庁検事=平岡俊将の意見を引用してゆく。

(注:1)補張という言葉を調べてみたが、該当するものは見つからなかった。しかし法律用語として存在している可能性も捨てられない。私としては前後の文脈から「補強」という文字が頭に浮かぶのだが。

(注:2)綱引。ここでもやはり前後の文脈から察するに、私の頭には「細引」という文字が浮かぶが。

(注:3)判読不能。これはもうお手上げである(いや、執念深く凝視していると、私の脳に、"調べ"という文字が浮かんだが) 。