アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 475

【公判調書1582丁〜】

                          「狭山事件の特質」

                                                                          中田直人

第三、本件の特徴

1.『本件において証拠の中心となっているのは自白である。各弁護人の意見が自ずと明らかにするように、それは唯一の証拠であると言ってもよい。吉展ちゃん殺しの犯人取り逃し、別件逮捕という強い批判、そうした中で、なおかつ生まれた自白であり、そしてその自白によって物的証拠さえ発見された。「被告人が犯人であることは動かない」これまで述べてきたような経過は世間一般に強くそのことを印象づけた。警察に対する批判が大きければ大きかっただけに、逆に世人に与えた印象は強かった。それは抜きがたいものでさえあるだろう。原審第一回公判で石田弁護人は「被告人が真犯人であるかのような雰囲気があり、厳格な証拠調べ、審理というものを欠かして裁判した場合の危険の大きさを考えます」と述べた。遺憾ながら原審はその危険を現実のものとした。当審で被告人が否認直後、読売新聞は読者の質問に答えて「狭山事件について読売新聞では、大きな社会問題だっただけに石川の刑が確定するまで今後も動きがある度に報道を続ける方針です」という編集者の見解を載せた。弁護人の抗議に会い、同紙は弁護人の抗議を掲載すると共に右文章の趣旨を釈明した。フレームアップや誤判は、それを信じて疑わない世論を作り上げることによって行なわれてきた。本件もその例にもれない。裁判は少なくとも、裁判だけはまずこのように植え付けられた偏見から離れたところで始められなければならない』

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2.『本件で際立った特徴は、被告人が捜査中から一審、そして当審の始めまでの間、弁護人に対する信頼を少しも持っていなかったということである。この事実は逆に言えば被告人の警察での約束に対する信頼がいかに根強かったかを意味している。異様にさえ思えるこの事実が、被告人の生い立ち、環境、人柄、虚偽の自白の生成過程を解明するカギであると考えねばならない』  (続く)

写真は「無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部編・解放出版社」より引用。添えられた説明文には「石川さんの逮捕を報じる新聞。根拠もなく石川さんを犯人ときめつけ、部落に対する差別意識をあおるものも多かった」とある。