アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 379

【公判調書1369丁〜】法廷で証言をするのは石川一雄被告人(以下、被告人と表記)であり、問うのは検事。

検事=「遠藤さんが書いたのをなぞったという時に、図面のほかの説明の字とか名前の字の元の字も、遠藤さんが書いたのですか」

被告人=「自分が書いた時もありますが遠藤さんが書いた時もあります」

検事=「あなたが書いたという時は説明のところなどは書いてないわけですか」

被告人=「多分書いてあったと思います」

検事=「なぞったのと、なぞるので無くあなただけが書いたのとがあるということですか」

被告人=「ええ、そうです」

検事=「下に写っているのは図面だけで、説明の字とか名前とかは写っていないのもあったわけですか」

被告人=「そうです。そして自分で書いた時もあります」

検事=「遠藤さんが図面を書いたとすると、先程、木の葉っぱみたいなものを書いたのがありましたね」

被告人=「はい」

検事=「ああいうのも皆書いたのですか」

被告人=「そうです」

検事=「書く前に、あなたが他の紙に鉛筆か何かで書いて、それをきちんとするために遠藤さんが書いた、ということはありませんか」

被告人=「そんなことはないと思います」

検事=「調書は青木さんが書いていますね」

被告人=「はい。ほとんどそうだと思います」

検事=「青木さんがその図面書いたという事はないのですか」

被告人=「ないです。書いたのはほとんど遠藤さんです」

中田直人主任弁護人(以下、弁護人と表記)=「(昭和三十八年六月二十二日付被告人の司法警察員青木一夫に対する供述調書添付の図面4“記録第七冊第二〇二四丁”を示す)この図面の左下の方に『へりこふたーのをりたところ』と書いてありますが、これはヘリコプターの降りた所という意味ですか」

被告人=「そうだと思います」

弁護人=「ヘリコプターの降りた所というのはどういう意味なのか分かりませんか」

被告人=「・・・・・・・・・・・・」

弁護人=「あなたは五月四日、死体が発見された日にその現場近くに見に行ったでしょう」

被告人=「ええ、見に行きました」

弁護人=「あの日ヘリコプターが飛んでいたのでしょう」

被告人=「飛んでいました」

弁護人=「あの近くにヘリコプターが降りたことがありましたか」

被告人=「ありました。俺が見ているとき上にも飛んでいました。三台あったと思います」

弁護人=「“にかいや”と書いてある近くに丸を書いて“へりこふたーのをりたところ”とありますが」

被告人=「降りていました」

弁護人=「二階家の近くに降りたことがあるのですか」

被告人=「ええ、降りたです」

弁護人=「今この図面を見て、どうしてヘリコプターの降りた所を書いたか、その訳は分かりませんか」

被告人=「ちょっと分からないですね」

検事=「その第二〇二四丁の図面はあなたが最初から鉛筆で書いた図面ですか」

被告人=「そうだと思います。知っていたから、全部」

弁護人=「一番上に“○○(被害者名)ちゃんがしんでたとこる”とありますが、○○(被害者名)ちゃんが死んでいた所も知っていたのですか」

被告人=「知っていました。見に行ったから」

弁護人=「見に行ったというのは、いけた場所(注:1)を見に行ったという意味ですか」

被告人=「そうです。出すところまで見たです」

弁護人=「図面の左端に縦に赤線があり、その下に続いて黒線が右斜め下に向かって少し引いてありますが、その下には何と書いてあるのですか」

被告人=「ちょっと読めないですね」

弁護人=「あなたが書いたのかどうかも分かりませんか」

被告人=「ちょっと分からないですね」

弁護人=「○○(被害者名)さんが埋めてあったところという意味ではないのですか」

被告人=「そうかも知れません」

弁護人=「鉛筆で線を引いてあるのは、仮に埋めた所とすると埋めた所のどこを指示しているか分かりますか」

被告人=「分からないですね」

弁護人=「あなたの記憶では、○○(被害者名)ちゃんが死んでいた所というのは、死体が発見された所という意味で書いたのだ、ということになりますか」

被告人=「そうです」

弁護人=「この図面を見て、この図面はあなたが自白をする前に書いたか、自白をした後に書いたかその辺は分かりませんか」

被告人=「前だと思います。これに書いてある事は自分は全部知っていたから」

裁判長=「自白をする前というのは、三人でやったという事を言う前か、一人でやったという風に言う前か」

被告人=「全部の前です。まだ何も言わない時です」

検事=「その調書に添付されている図面四枚は全部あなたが書いたものに間違いないですか」

被告人=「はい」・・・・・・(続く)

(注:1)、いけた場所=埋めた場所。

*老生はボンヤリと供述調書添付の図面を眺めていたが、そこに重大な情報が露呈している事に気付く。図面には、石川一雄被告人による拙い文字で書かれた事件関連現場の説明が残されているが、その筆跡を注視すると、昭和三十八年五月一日夕方、中田家に届けられた脅迫状に記された文字の筆跡とは全く違うのである。筆跡鑑定などの知識を老生は備えていないが、素人目にもそれは明らかである。

例えば2113丁の図面を見ると、「俺」が「をれ」であったり、「山学校」が「やまがあこを」と書かれ、この当時の石川一雄被告人の文筆力は破綻しており、とすると中田家に届けられた脅迫状の作成者とはならない証明になるのではないか、などと考察してみた。

これが脅迫状である。あえて誤字・あて字を挿入しているが 、脅迫に必要な情報は無駄を省き記されている。これはかなり高度な技術であり、失礼ではあるが当時の石川一雄被告人にはこれほどの能力は持っていなかったと推測できる。