アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 378

 

【公判調書1367丁〜】

中田直人主任弁護人(以下、弁護人と表記)=「今まで面会したりした時に、あなたに何度も自白の中でこういうことはどうして言うようになったのかということを聞いて来ましたね」

石川一雄被告人(以下、被告人と表記)=「はい」

弁護人=「その中で、どうして山学校の方へ行ったと言うようになったかについて、あなたは今まで私にもはっきり覚えていないと言っていたが、思い出しましたか」

被告人=「はい」

弁護人=「どうかということからか」

被告人=「まだ捕まって間もない当時、私の友達に、名前はちょっと分かりませんが奥富という植木屋がいました。

弁護人=「あなたが十四軒のお百姓さんのところに東島と一緒に行った時、連れて行ってくれた人ですね」

被告人=「そうです。その人が東島と俺が山学校付近に居たということを警察に届けたらしいです。もちろん警察でも最初のうちはそれを信用したらしいですね。それで、山学校付近に東島と俺と居たということで、山学校ということになっちゃったです」

弁護人=「あなたの自白調書を見ると、五月十一日ごろに、時計を田中に捨てたという供述がありますが、時計を田中に捨てたと言う様になったのはどういうことからですか」

被告人=「それは、親父なんかと五月九日か十日かどっちか日にちははっきり分かりませんが、水村さん方に仕事に行ったです。そうしたら親父が、石田豚屋の義男が警察に連れて行かれたそうだがお前は何もしていないのか、と言ったです。当時、石田にいる時、材木を盗んだ事なんかやったから、やっていないとは言わなかったですが、ただ、何でもないよと言ったです。親父は、本当に何でもないかと言ったので、本当に何でもないと言って、それで、連れて行かれたかどうかと思って次の日新聞を買いに行ったです。だから十一日だと思えば新聞を買いに行った日が多分十一日だと思います」

弁護人=「どこに新聞を買いに行ったのですか」

被告人=「俺の友達の家で、朝日新聞です」 

弁護人=「場所はどの辺ですか」

被告人=「当時の郵便局の坂を降りて行くと直ぐのところです。そこの俺の友達が、そこに買いに行ったことは認めてくれたですけど、警察に捕まってですよ、これは。石田豚屋にいた時、地名はちょっと分からないですけど峯の方に自動車のタイヤをちょくちょく取り替えに行っていたそこの家の人が十一日の日にその辺で見たと警察に言ったらしいのです。それで、狭山にいるとき面通しも多分されたと思います」

弁護人=「十一日の日に峯のあたりでお前を見た人がいるぞということなのですね」

被告人=「そうです。タイヤをやっている人だと言うから、それでは俺も知っていますから、誰々さんですかと言ったのす。そうしたら、そうだよく知っているじゃないか、と言われたです。面通しされて幾日か経ってから、確かにお前はそこへ行ったと、面通しした人も確かに俺だと言ったらしいです」

弁護人=「狭山にいる時にそういうことを警察官から言われたので、自白するようになってから時計を田中に捨てたと言う様になった、ということですか」

被告人=「そうです」

弁護人=「あなたは今までは、時計を田中に捨てたというのは五十子米屋の手拭いが問題になっていたのでその近くという意味で言った、と言って来ましたが」

被告人=「それもあります」

弁護人=「それに、今日言ったような事も思い出したわけですか」

被告人=「そうです。但し、タイヤをやっている人は後で、俺じゃなかったと言ったらしいです」

弁護人=「初めの頃は、タイヤをやっている人が五月十一日の夜あなたを見たと言っていて、後になったら違ったと言ったのですか」

被告人=「そう言ったらしいです。俺は会わせてくれと言いました」

弁護人=「それはいずれもあなたが取調中に警察官から聞いたことですね」

被告人=「そうです」

弁護人=「タイヤをやっている人というのは」

被告人=「パンクなんかを直す人です」

弁護人=「自動車のタイヤ修理ですね」

被告人=「そうです。石田に居る時そこでやって貰っていたです」・・・続く。

*引用した文中にある「十二軒」「田中」は狭山市及び所沢市の地名である。さて、狭山事件再審弁護団が中心となって行われた、再現実験という行動が記録されたものがあり、ここに引用、転載させて貰う。説明文によると「石川一雄被告人の、不合理、不自然性をチェックすることを目的にして自白の内容をそのまま時間を追って再現してみる」とあり、自白と同じ行動を演じた実験である。

石川一雄被告人や被害者のモデルが、石川一雄被告人の自白を再現する実験を行なうが、結論は、非常に困難な行動であると結ばれている。被害者を強姦、殺害し、二百メートル離れた畑へ運び、その遺体を畑の芋穴に逆さ吊りにし、再び引きずり出し、茶畑の一角を掘り、そこへ埋める。しかもその間に、被害者の家へ脅迫状を届けているのである。ここに犯行者の並々ならぬパワーを見せつけられるのである。