検事=「今の、石川君が作った歌の話ですけれども、全然覚えてないかな、歌の文句」 証人=「文句はちょっと長いし、一番、二番、三番ってあったんですね。そんな程度だったら分かるんですけれども」 検事=「一、二、三番があったという程度しか覚えていない」 証人=「ええ。あと、でも大体の感じとしては自分の気持ちを歌ったんだなというようなことは」 検事=「気持ちというのはどういう風な気持ち」 証人=「そのまあ、今の事件に対してのあれですね」 検事=「あなたが言う、気持ちを歌ったようだという気持ちのことだが、どういう気持ちのことですか」 証人=「うんと・・・・・・まぁ、本人から話された時の内容と、だぶってるかも分からないんですけれども、その、何年か経ったら出られるんだろうという、そういうこともあっただろうと思うんですが」 検事=「私が今言えば思い出せますか」 証人=「さあ、それは断言出来ないんですけれどもねえ」 検事=「この刑務所から移されたとか、そういう風なことは文句の中に無かったですか。移された、どこからどこに移されたということが。記憶なければ結構ですが」 証人=「そう言われてみると・・・・・・はっきりは言えないけれども・・・・・・」 検事=「それじゃ自分が白状したんだというようなことは歌の文句の中には無かったですか」 証人=「ええ、そういうようなですね」 検事=「こともあった」 証人=「ええ」 検事=「そうすると、何かこの世に生きておられんとかいうような、そういう文句は無かったですか」 証人=「それは・・・・・・記憶・・・・・・」 検事=「無ければいいんです」 証人=「ええ」 検事=「そこで、結局石川君が話しておったと同じような意味の気持ちだと思うと仰るから、その気持ちというのはどういう気持ちなんだろうかと、そこが、歌から受けた気持ちを、どういう気持ちを歌ったような歌だったかという事が、もし、あなたが言えれば、分かれば聞きたいと、こういうことですが」 証人=「だから、・・・・・・まあ・・・・・・さっきも言いましたけれど、あそこで話していた事とちょっと混同して、歌の文句はこういうのだったかなあと、まあ・・・」 検事=「それでは、先程の話の中に、何か共犯があるとか何とか言っていたということを、あなたは仰っていたように思いましたがね」 証人=「ええ、言ったです」 検事=「それはいつ頃の話ですか。あなた一緒になってからどれ位の頃」・・・・・・続く。
*前回の、弁護人と池田証人との問答で、証人は、同房の石川一雄被告人が“ 共犯がいる ”ような事を語ったと述べた為、平岡検事はそれについて追及し始めた。話は変わるが、引用文の下から十五段目で始まる平岡検事の質問は、日本語の口述文としては最悪であろう。非論理的、つまり分かりづらいのだ。考えながら分かり易く話すという能力が欠如しており、証人がたびたび「・・・・・・」となる原因の一つとも考えられる。