(池田証人に、房内で石川被告人が歌を作っていたことを確認した後) 弁護人=「そのことでちょっとお尋ねしますが、あなたと一緒になるようになってから、歌を作るようになったんですか」 証人=「その前からですね。詩とかそういうのは短歌、俳句なんかを作っていたようです」 弁護人=「あなたと一緒になってからも石川君が歌を作ったことがありますね」 証人=「はい、あります」 弁護人=「あなたも一緒に歌ったことはありますか」証人=「ええ、大体メロディみたいなもので、口ずさんで歌ったことはあります」 弁護人=「勿論、石川君も歌ったんですね」 証人=「はい」 弁護人=「どんなメロディだったか」 証人=「そうですね、あの頃流行っていた三波春夫の歌だったです。題はちょっと忘れたんです」 弁護人=「そうすると三波春夫が歌ってる歌をもじったようにして作った歌というんですか」 証人=「最初に一番、二番、三番と詩を書いて、それに三波春夫の歌が合うような音楽だったんで、それで歌ったんです」 弁護人=「石川が作ったのは一番から三番まであったんですか」 証人=「そうです」 弁護人=「あなたが、石川君が書いた歌を紙に書いてあったというのを見たことありますか」 証人=「あります」 弁護人=「石川君はその歌をどこで書いていたんでしょう」 証人=「あの書信室ってありますね、手紙なんか書く所。そこで書いて来ました」 弁護人=「あなた、そのメロディ、歌詞は正確に覚えて無くても、メロディは頭に浮かびますか」 証人=「まぁ頭の中では分かってるんですけれども」弁護人=「口に出して歌うほどには残っていないと」証人=「・・・・・・・・・」 弁護人=「三波春夫の歌ってたメロディだということははっきりしているんですか」 証人=「はい」 弁護人=「そこで、その歌の文句ですが、石川君は自分の事件の事を、何か歌に書いてるわけなんですか」証人=「ええ、まぁそういう自分の体験というか考えることを書いた歌だと思います」 弁護人=「その歌の全体の感じでもいいんですが、石川君は自分はやっていないんだという気持ちをね、歌っていたものであったかどうかはどうですか」 証人=「ええ、・・・・・・そういうこともあったと思います」 弁護人=「思い出してもらうためにちょっとお尋ねしますが、その歌の文句の中に“ ○○(被害者名)ちゃん殺しはさらりととけぬ ”というくだりがありましたか」 証人=「ええ、それは多分最初のほうの文句だったと思います」 弁護人=「するとあなたは石川君が歌の文句を紙に書いてあったのを見てるということですので、石川君は房の中に、その歌を書いた紙を持ち込んでおったんですね」 証人=「はい」 弁護人=「石川君と一緒に歌ったのはあなただけですか、もう一人いた人も歌ってましたか」 証人=「もう一人の人はあんまり歌ってなかったと思います」 弁護人=「石川君が歌を書いた紙を、拘置所の人に持っていかれたということはありますか」 証人=「ええ、捜検の時に。そういう、字を自分で書いたのを部屋の中に持って来ては悪いんですね。それを捜検の時に見つかって取上げられました」 弁護人=「それは、当時は定期的に捜検というのはあったんですか」 証人=「大体一週間に一回あったんです。多い時は二回位あったんですが」 弁護人=「その捜検をした人は何という人だったか記憶ありますか。あるいは名前が分からなくても肩書でも」 証人=「何回もあるもので、いろいろな人が来るんで、あの時は誰が来ていたか分かりません」(続く)
(入間川某所。撫でようと近づくが、私が手ぶらだと分かると巨体をゆすりつつ去って行った)