(入間川にかかる橋の下、威圧を放つ野良猫)
狭山の黒い闇に触れる 325
【公判調書1250丁〜】 第二十八回公判 証人=池田正士(二十四才・自動車運転手) 裁判長=「証人はここにおる石川一雄という人を知っていますか」 証人=「知っております」 裁判長=「どういう関係で知っておるんですか」 証人=「自分も事件を起こしまして、浦和の拘置所の一緒の部屋にいて」 裁判長=「いつ頃の話ですか」 証人=「三十九年の三月から四月一杯」 裁判長=「三月のいつ頃」 証人=「三月の終わり頃だったと思います。四月一杯の一ヶ月位です」 裁判長=「同じ部屋にいたんですか」 証人=「はい」 裁判長=「どっちが先に入っていた」 証人=「自分が後から入って行きました」 裁判長=「そして石川のおった房に入った」 証人=「ええ」 裁判長=「そして先に出たんですか、その房を」 証人=「いや、石川君が控訴して東京に来たから自分が後まで残っていたんです」 裁判長=「石川のほうが先に東京拘置所の方へ来た」証人=「はい、そうです」 裁判長=「その房は何号室ですか」 証人=「十七号室だと思います」 裁判長=「途中でその房を替わったことはありませんか、十七号から他の房に移ったことは。自分一人で」証人=「自分はあります」 裁判長=「いつ、何日目くらいに移ったんですか」 証人=「あそこに行ったのが三月九日、警察からですね、浦和に行ったのはその時は一人で入って、その後一緒に入ったんです」 裁判長=「初めは三月九日に入って、三月末頃までは一人でおった。何房に」 証人=「二階二十四房です。その後一階の二房に来て、それから九房位のところへ行って、それから十七房です」 裁判長=「十七房に行った時に石川一雄と一緒になった」 証人=「はい、そうです」 裁判長=「そして十七房にいる間に石川一雄が東京の方に移監されたと」 証人=「はい、そうです」 宇津泰親弁護人(以下、弁護人と表記)=「あなたが浦和拘置所で石川一雄君と一緒に入っておった時には二人でしたか」 証人=「いや三人です」 弁護人=「もう一人の人の名前は知っていますか」 証人=「一人は押田といったと思います。あともう一人は途中から変わって市川勇だと思ったです」 弁護人=「そうするとあなたが石川一雄君と一緒にいる間、もう一人の第三人目の人が変わっているわけですね」 証人=「はい」 弁護人=「あなたが石川一雄君と一緒にいる間に、石川君に第一審の判決が下っておったかどうか」 証人=「下った直後だったと思います」 弁護人=「ところで石川君と一緒にいる間、石川君が何か歌を作っていたということがありますか」 証人=「ええ、あります」 (続く)