弁護人＝「今言ったようなことがあったその少し前に石川君が起訴状を破いたというようなことで注意したことはありませんか」 証人＝「私からですか」 弁護人＝「はい」 証人＝「私から注意したことはございません」 弁護人＝「先程、本のことを伺ったのですが、担当と言い争ったという事件が起こった頃になって初めて、石川君の所に書物が差入れになったのではないでしょうか」 証人＝「外部からの差入れですか」 弁護人＝「はい」 証人＝「外部からの差入れはないと思います」 弁護人＝「それでは十二月の末近くなった頃初めて、石川君に本を見せるようになったのではありませんか」 証人＝「いつ頃本人の手に渡すようになったのかは判りませんが、接見禁止が解かれましてから、本人から申請がありましたので漫画的な本を入れた記憶があります」 弁護人＝「接見禁止を解かれたのは九月の四日なのですが、石川君に本を見せるようになったのは十二月の暮れも押し迫るようになってから初めてじゃないですか」 証人＝「その時期については記憶ございません」 弁護人＝「接見禁止が解かれてから、直ぐ見せましたか。かなりの時期があったのでしょう」 証人＝「さあ、その時期はどのくらいだったか今ちょっと記憶ありません」 弁護人＝「石川君は家族の人から“ 平凡 ”という本を差入れてもらったことはありませんかな」 証人＝「････････････」 弁護人＝「拘置所へは“ 平凡 ”という本がよく入るでしょう」 証人＝「はい」 弁護人＝「石川君が家族から“ 平凡 ”という本を差入れられたことはなかったですか」 証人＝「ちょっと記憶していません」 弁護人＝「昭和三十八年の十二月末頃になって“ 平凡 ”の差入れがあって、初めて石川君は本を見れるようになったんじゃないですか」 証人＝「いつ頃入って、いつ頃見始めたのか、そいつは記憶が出ませんですね」 弁護人＝「池田正士という人を知ってますか」 証人＝「はい、知っております」 弁護人＝「先程この法廷でお会いになりましたね」 証人＝「はい」 弁護人＝「石川君と池田正士君が同じ房にいたことがありますか」 証人＝「はい、あります」 弁護人＝「いつ頃からいつ頃までか憶えていますか」 証人＝「ちょっと記憶ありませんが、もちろん石川君が雑居房になった時に池田君と一緒になったと思います」 弁護人＝「あなたの記憶を喚起するため伺うんですが、先程の池田さんの証言では石川君がすでに入っている房へ、後から入っていったということを言っておられるんですけれどもね、雑居房に石川君が入るようになってから池田君と一緒になったのは、時期的にはズレているんじゃないですか」 証人＝「いつだったか、その時期についてもちょっとはっきりした記憶は思い出せません」 弁護人＝「石川君が池田正士君と同じ房にいた頃、石川君が歌を書いた紙を持っていたことを知りませんか」 証人＝「さあ、それもはっきりした記憶はありませんが、どのような歌の内容ですか。見たこともありません」 弁護人＝「浦和拘置所には事務室の近くに書信室がありますね」 証人＝「はい、あります」 弁護人＝「書信室で筆記したものを房内へ持って入れるんですか」 証人＝「はい、それが正式な許可されてるノートに書くことは構いませんが、ちり紙などに書いたものは持って入ったとしても後に調べて、雑然としてはいると困りますから本人に言って処分します」 弁護人＝「何か歌が書いてある紙を、捜検の時に発見したことはありませんか」 証人＝「それは私、ございませんです」 ･･･続く。
＊中田弁護人の尋問は、石川被告人が書いた歌の紙そのものに向かっているようだ･･･。
本文とは関係ないが、ふと、あの娘達は元気かなと回想してしまったのであった。某公園でくつろぐ野良達である。
うぅっ、丸い目玉が愛おしい。
凛々しいぞ、お前。
コイツは迫力があったなぁ。 
この顔は･･･老生の高校生時代、憧れの同級生であったヒトミさんと同一人物(猫物？)ではないか。なるほど、生まれ変わったんスね。猫になってもカワイイッすよ。という事で、近日中にこれらの娘の消息を尋ねる予定である。
