狭山の黒い闇に触れる 301
【公判調書1208丁〜】ここからは中田主任弁護人に代わり石田弁護人が尋問する。 弁護人=「この前の供述で、あなたは川越にいた頃に、地図を書いた日の翌日に時計を見せられたと言いましたね」 被告人=「はい」 弁護人=「その地図を書いた日の翌日という場合の地図というのは、これは時計の地図のことですね」 被告人=「はい」 弁護人=「あなたは時計を捨てた場所に関する地図を何回か書いておりますか」 被告人=「一回だけだと思います」 弁護人=「そうすると、時計を捨てた場所の地図を書いたというのは、一通書いただけだという記憶なんですね」 被告人=「はい」 弁護人=「何日頃であったかは、はっきりしませんか」 被告人=「二十七日頃だと思います」 弁護人=「頃、ということですね」 被告人=「はい」 裁判長=「それは検事の調べの時のことですか、警察官ですか」 被告人=「長谷部さんです。警察官です」 裁判長=「検事の調べじゃないね」 被告人=「はい」 弁護人=「それから、やはりこの前の時に、調書が何通か作られていて、一度に三通くらい名前を書いたことがあるという事でしたね」 被告人=「はい」 弁護人=「その、一度に何通かの調書に名前を書いたというのは、場所は川越分室ですか」 被告人=「はい、そうです」 弁護人=「狭山の時のことではないですね」 被告人=「はい」 弁護人=「それから、取調べられている時、あなたは手錠をはめられて調べを受けていましたか。どうですか」 被告人=「はい、いつも片方は、はめられていました」 弁護人=「いつもですか」 被告人=「はい、左手に」 弁護人=「それは狭山でも川越に来ても同じですか」被告人=「はい、同じです」 弁護人=「それから紙を切るのをやらされたのは、狭山にいた時からのようですけれども、川越に移される何日くらい前から紙切りをやらされるようになったんですか」 被告人=「十日頃だと思います」 弁護人=「六月十日頃からということですか」 被告人=「はい」 弁護人=「紙を切って字を作ることだけだったですか」 被告人=「人形をやって脅かされた、これが○○(被害者名)ちゃんの手だとか、足だとか言ってからだと思いますから、それだけだと思います」 弁護人=「字だけでなく、人形みたいなふうのも紙を切ったわけですか」 被告人=「はい、そうです」 弁護人=「それは狭山にいる時には、誰が紙切りの仕方を教えてくれたんですか」 被告人=「人形ですか」 弁護人=「ええ」 被告人=「人形は、教えたというか、これが○○(被害者名)ちゃんの手だとか教えたということじゃなく、そういう風に言ったです」 弁護人=「誰が言ったの」 被告人=「長谷部さんです」 弁護人=「それからちょっと話は変わりますが、川越分室には柱時計、あるいは置時計はありましたか、そこに備付けの」 被告人=「ないです」