*河本検事は、石川一雄被告人が家族と会えない状況を利用し、被害者の父親宛てにお詫びの手紙を書かせた。この “お詫びの手紙” という性質上、それは手紙の書き手である石川被告人が犯人であることを物語り、裁判において、それは重い効果を発揮するだろう。そして、さらに推測を付け足せば、そのような材料(お詫びの手紙)をひねり出した河本検事の真意とは、石川被告人を犯人とする直接証拠が無く、裏を返せば、公判を維持できるか不安だったのかもしれない。そこで思いついた案の一つがお詫びの手紙を書かせる、ということではないかと私は思う。あくまで推測であるが。
狭山の黒い闇に触れる 277
【被害者の父にお詫びの手紙を書いた件について】 弁護人=「あなたは中田栄作さん宛てに手紙を書いたことがありますね」 被告人=「はい、あります」 弁護人=「その手紙は自分から書こうと思って書いたのですか」 被告人=「いや別にそういうわけじゃないですけど、河本検事さんが私の家に行ったら、親父なんかが親戚一同そろって謝りに行くから、謝りの手紙を出してくれと、そういう風に頼まれてきたと、河本検事が言ったから書いたです」 弁護人=「河本検事はあなたの家に行ったら、家の人から謝りに行くけれど、その前に謝りの手紙を書いておくようにということを言付けられたと、こういうことを言ったわけですね」 被告人=「はい、そうです」 弁護人=「実際に、そういうことがあったか無かったか、あなたは分かりますか。家の人があなたに言うように事付けたことがあったのかどうか」 被告人=「この前、東京拘置所へ親父なんかが面会に来た時言ったら、そんなことはないと言っていました」 弁護人=「河本検事には、川越の警察へ行ってからも調べを受けましたか」 被告人=「はい」 弁護人=「河本検事からどういう調べを受けたか、あまり聞いていないものですからちょっと伺いますけれども、河本検事があなたに言ったりしたことで憶えていることがあったら言って下さい」 被告人=「スコップを見せてくれたり・・・」 弁護人=「それはあなたが自白をした後ですか」 被告人=「そうです」 弁護人=「ほかに何か、品物を見せてくれたことはありませんか」 被告人=「棍棒、それとビニールの風呂敷なんかも見せてくれたと思います」 弁護人=「あなたが見た棍棒というのは、どのくらいの太さでしたか」 被告人=「私の腕ぐらいだと思います」 弁護人=「直径何センチくらいか言えませんか」 被告人=「ちょっと分かりませんね」 弁護人=「あなたの腕というと四、五センチぐらいでしょうか」 被告人=「五センチはありますね」 弁護人=「と、かなり太い棒ですね」 被告人=「はい」 弁護人=「あなた、その棒について河本検事から、棒はどうしたんだと聞かれたんでしょう」 被告人=「はい、聞かれました」 弁護人=「どういう風に答えましたか」 被告人=「知らないと言ったです。そしたら棒で○○(被害者名)ちゃんを二人で担いで来たんじゃないかと、そういうことを言われたです」 弁護人=「そういうことを河本検事が聞いたのは、自白してから後ですか」被告人=「後です。三人って言ってからだと思います」