裁判記録から引用した写真である。上が53番、下が54番と番号が振られ、連続した並びであるが、町田忠次と町田忠治という名前の違いに気付いた。忠治、との名は調書で認識済みなので、私は目下、忠次という調書上での所在を詮索中である。
狭山の黒い闇に触れる 270
【公判調書1172の23】 弁護人=「あなたの自白を見ると、佐野屋のところから町田忠治の家の方へ逃げたとあるが、そういうように話したことはあるのですね」 被告人=「あります」 弁護人=「そういう話をした時に、取調べている人はすぐにそうかと納得しましたか」 被告人=「しなかったです」 弁護人=「何か言いましたか」 被告人=「俺が逃げたと言った方の町田忠治という人の家のすぐそばに、水が流れるように土管が埋めてあり、そこにはいつも水はありませんけれども、そこを通って逃げたと言ったら、その下におまわりが二人居たから逃げられるわけがないと言われたし、犬もあべこべの方へ行ったと言われたです」 弁護人=「警察の方で、犯人がどちらの方へ逃げたか犬を使って調べてみた、ということもあなたに言っていたわけですね」 被告人=「そうです。だから、そっちではないだろうと言われました」 弁護人=「警察の方では、どちらの方へ逃げたという風に言わなかったのですか」 被告人=「ただ佐野屋の付近からどっちへ逃げたと言われたので、町田忠治の前を通って南へ抜けたと言いました。そうしたら、そこの土管の下におまわりが二人張っていたから通れるわけはないと言われました」 弁護人=「そこは通れなかったからこっちの方向へ行ったのだろう、ということは言わなかったのですか」 被告人=「言われました。地図を示されました。だけど、そっちへ行くと道が分からなくなってしまうので、自分の分かりいい方へ逃げたと言ったです」 弁護人=「地図を見せられて、どちらの方向と言われたのですか」 被告人=「石田豚屋の方面だと思います」 弁護人=「あなたは石田豚屋にいたわけでしょう」 被告人=「そうです」 弁護人=「そこの道はよく分かっていたのではありませんか」 被告人=「石田豚屋の辺までは分かるけど、その向こうへ行くと分からなくなっちゃうです。だから自分の分かりいい方を言っちゃったです」(続く)