狭山の黒い闇に触れる 234
事実取調請求書・請求する証拠の番号=9。 ①証人・長谷部梅吉は第八回公判において「奥富玄二が本件と関係があるのではないかという疑は持っておらず、必要が無いから調べなかった」旨供述している。だが、読売新聞の報道によると「特捜本部は、自殺した奥富玄二が五十子精麦所の手拭いを入手できる立場にあること、筆跡に似た点があること等から “ 疑わしい点が相当ある ” と発表」等の記事があり、矛盾する。そこで弁護側は証人・長谷部梅吉による供述の証明力を滅殺するものとし該当の新聞記事を証拠請求する。 証拠の標目・昭和三十八年五月七日付読売新聞朝刊十四版、十一面「疑惑深まる “自殺した青年” 前後の行動追及、似た筆跡・血液型も一致」という見出しのある記事。 ②証人・諏訪部正司の第十一回公判証言、証人・将田政二の第十二回証言によれば、五月三日朝警察犬を用いた際、石田一義の家の方へ行ったものがあるというのであり、犯人の逃走経路は右の方向であったと認められる。他方、読売新聞の報道によると「捜査線上に残っている容疑者Aは、佐野屋と直線距離にして二百メートル以内に自宅があり、犯人の足跡はAの家の方向に真っ直ぐ向かい、途中で逆戻りして少し引き返した後、左に曲がっている」旨の記事があり、諏訪部・将田、両証人の証言と符号する。したがって弁護側は各供述の証明力を補強する証拠として該当の新聞記事を証拠請求する。証拠の標目・昭和三十八年五月七日付読売新聞朝刊十四版、十一面「別に三人の容疑者、水色シャツの男も」という見出しのある記事。(続く)