アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 30

「狭山裁判と科学」(武谷 三男編 社会思想社) 読了。                 締め括りとして執筆者である大物科学者たちが座談会を行い、その模様が記載されている。これがまた刺激的で面白い。以下抜粋してみると、「だけど今度の場合は、かなり多くの物証をでっち上げていったということですね。だけど残念ながらそれが甚だ幼稚なものだから、まぁ科学者としてみるとちょっとお粗末ということなんじゃないかね」( 武谷 ) 「狭山事件でのスコップ付着の土壌の鑑定についていうと、無実の石川君を犯人に仕立てるために証拠のでっち上げをきわめて熱心にやったということは、じつにハッキリしてますね」「理は100パーセント弁護団側にあったのに、地質学や土壌学のイロハもわきまえていないような、およそ理屈にならない反論が検察側から出され、その結果どうなったかというと、あの寺尾判決ですね」( 生越 ) 座談会だけに実に明快である。そして最後に武谷 三男氏による「編者あとがき」で締められるが、このわずか三ページが素晴らしく強烈な内容である。冤罪の引き合いに出されたのは"法医学の天皇"古畑  種基 東大名誉教授、科学警察研究所所長である。この権威中の権威といわれた"法医学の天皇"は二つの有名な冤罪事件、すなわち弘前事件及び島田事件において判決の決め手となった鑑定の、まさしく鑑定者そのものであった。弘前事件では真犯人が名乗り出るという驚愕の展開で被告人の冤罪が晴らされ、古畑鑑定は棄て去られた。また島田事件においても最高裁が採用した鑑定は間違いとされた。岩波書店は"法医学の天皇"が著した「法医学の話」を絶版、各書店の店頭から引き取ったともいわれる、と、このページで述べられている。やはり人は"法医学の天皇"の権威には振り回されるのだな。それが最高裁判所であったとしても、だ。                                                                          

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