アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 20

読み直す程に味わいを増す本とは本書であった。        

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この、地味でちっぽけな、朴訥とした文庫本であるが、見た目からは想像もつかない高濃度の狭山事件裁判・分析本である。私が思うに古書価格五千円くらいの内容だと評価したがアマゾンでは激安で出回っており「分かっとらんなぁ、チミたちは」と、言ってはみたものの、私自身も捨て値で購入していた・・・。                

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(おや、値札シールの裏にうっすら500と見えるが・)      さて本書「第4章 筆跡」において、第二審寺尾裁判長は脅迫状の文字は被告の筆跡と類似するとの、警察・検察側の鑑定結果に依拠し被告を有罪としたが、この鑑定方法には欠陥があり、それに対し本書は「〜筆跡の個性は、簡単な平仮名一字一字の中に見出すことはできないので、文字全体の配列や、より複雑な漢字のなかで初めて現れてくるのです」と述べ、それでも欠陥鑑定方法を支持するならば、「ことによると、寺尾裁判長の字も拡大して並べて見たら似て見えるかもしれません」と本書は語り、私はつい笑ってしまったが、実はこの記述に執筆者の高度な才能が現れている。こういった重めで緊張が強いられる場面において、読む者又は聞く者を「クスッ」と笑わせる事が出来るのは討論の熟練者にしか出来ない技なのである。大真面目な議論を交わす中、こういった気の利いた冗談をさりげなく差し込める達人は、最近めっきり見なくなったが。