アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 935

【公判調書2946丁〜】                    

                      「第五十五回公判調書(供述)」

証人=小島朝政(五十六歳・財団法人埼玉県交通安全協会事務局長)

                                            *

石田弁護人=「また前の話に戻りますが、腕時計が発見されたという報に接して、あなたはどんな風に思いましたか」

証人=「腕時計が発見されたという報告を受けた時に私は・・・・・・」

石田弁護人=「当時の感想ですよ、今のあれでなくてね」

証人=「先ほども申し上げておりますが、今まで否認していた被疑者が一回言ったからといって、一回目に果たして本当かどうかということが疑問にありました。それで当時の将田次席が翌日の、付近の捜査の計画を下命したんですが」

石田弁護人=「ちょっと待って下さい、将田警視が翌日の捜査命令をしたというのは」

証人=「前の日に言って、翌日に私達ががやったわけですね」

石田弁護人=「前の話ですか」

証人=「ええ」

石田弁護人=「いや、発見された時点で、どんな風に考えたかということです」

証人=「発見された場所ですか」

石田弁護人=「発見されたということを知ってね、あなたどんな感想を持ったかと、私、尋ねたんです」

証人=「これはですね、私は反省しております」

石田弁護人=「だから、反省するしないでなくて、どんな感じを受けたかと聞いているんです。端的に答えて下さい」

証人=「感じとしてはね、馬鹿な捜査員もいたもんだな、私自身、粗漏な捜査だという風に思いましたですよね。これはさっき繰り返した通りです」

石田弁護人=「やっぱりあそこで発見されたかという風には思いませんでしたか」

証人=「意外に思ったですね」

石田弁護人=「何ですか」

証人=「意外に思ったですね、あそこから出たかと、やっぱり本当だったかと」

石田弁護人=「しかし、あなたは捜査員から、どういう捜索をしたかという細かい報告を受けていなかったような趣旨のこともさっきは言ったんですがね」

証人=「そうなんです。もう、あんな所にない、という先入観で仕事をしていたのに、あそこに出たので、あれっという風に意外に思ったと、こういうことを申し上げているんですが」

石田弁護人=「まあ、意外に思ったということであるならば、やはり時計の近くに置かれていたビニールの袋ぐらいはね、領置すべきだということは当然だと思うんですがね」

証人=「何の関係がありましょう。私自身が今考えてもそうですし、当時もそうですが、時計がビニールに包んで捨てたというのならいざ知らず、ただ捨てたということだけであって、ビニールの袋が全く無関係だと私は当時思ってました」

石田弁護人=「それから、石川被告宅に三回捜索されてますね、あなたは」

証人=「はい」

石田弁護人=「一回目の捜索、二回目の捜索とも、非常に大勢の捜索員を同行されて、いわば、徹底的な捜索をされたということがあるようなんですがね、捜索状況をよく覚えておられるでしょうな」

証人=「今になっては、もう覚えておりませんですね。部分的に印象付けられたことは記憶がありますが、しかし、その状況を申し上げろと言われても、ちょっと記憶が出てきませんですね」

石田弁護人=「部分的に何か記憶があるということはどういうことですか」

証人=「というのは、一回目にですね、石川方居宅付近に、たくさんの報道陣、家族、部落の者がいっぱい押しかけていたということですね。それから二回目には、今言ったように、そのときは家族か誰かさんか、ちょっと記憶がありませんが、悪口を言われたのを断片的に記憶がありますですね。それから、私は犬が嫌いなんで、犬がいたのを覚えているんですがね。あとは家屋の中の捜索などもちょっと細かくは今、記憶がございませんですがね」

石田弁護人=「二回目の捜索のときね、連れて行った警察官は何人ですか」

証人=「十人以下でしょうね、せいぜい。私の方は四十人きりいないんだから、まあせいぜい十人行って、そのほかに特命か何かがあれば十人が欠けるし、いずれにしても十人前後だと思いますね」

石田弁護人=「もっと大勢だったという記憶はありませんか」

証人=「これはですね、関係のない人がいたんですよね」

石田弁護人=「どんな人がいたんですか」

証人=「まあ、家族の人はもちろんだが、外部に報道陣はおったし、それから、わめき立っている、そんな風なのが思い出せるし、二回目とすると・・・・・・」

石田弁護人=「二回目について言っているんですがね」

証人=「二回目とすると、あれは逮捕の切り換えのときだったでしょうかね。そうですね、逮捕の切り換えのときの捜索でしょうか。だとすると、ほかの近所の人か家族か分かりませんが、たくさんいたということで、部屋を捜索している捜査員のほかに、たくさんの人が目についた、そんなのが記憶にあります」

石田弁護人=「排除されたんじゃないですか。そういう邪魔者は排除されたんではありませんか」

証人=「立会人も一人だけじゃなくて、家族もおったように記憶しますがね」

石田弁護人=「家族以外の人もいたんですか」

証人=「外には見えていたようだったですね」

(続く)

捜索差押調書添付写真(昭和三十八年六月十八日、小島朝政作成)。被疑者石川一雄方居宅周辺の状況を東南方より撮影。

捜索差押許可状を被疑者の父、石川富造に示した状況。

居宅東南側の状況近写。