脅迫状の入っていた封筒。封筒の宛名は「少時様」と書かれた部分が消され、「中田江さく」と書き直されていた。この「中田江さく」という書き直された宛名は、被害者の父親「中田栄作」を指すのであるが、その脅迫状の文面はもとより、宛名にすら当て字を用いるという発想は常人には理解が難しい。それは、身代金を要求する相手の名が不正確であれば、その犯行は不成功に終えることは明らかであると思えるからだ。
【公判調書2583丁〜】
「第五十回公判調書(供述)」
証人=岸田政二(五十七歳・自動車教習所管理者)
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(続く)