【公判調書2541丁〜】
「第四十九回公判調書(供述)」
証人=岸田政司
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橋本弁護人=「加藤技師としての自然の歩き方で歩いて印象したのですか」
証人=「この3の石膏を見て、現場の泥がある程度湾曲しているのではないかというところは作りました。それに合わせるように形を作った上を歩くようにしたわけです」
橋本弁護人=「湾曲しているというのは」
証人=「現場に起伏があったのではないかと私の方は解釈したのです。その解釈のもとにやったわけです」
橋本弁護人=「そうすると、採取実験をする際にも起伏をつけてやったのですか」
証人=「ええ、ある程度そういう考慮はしました」
橋本弁護人=「加藤技師の身長、体重はどのくらいですか」
証人=「身長は、私は百六十三センチぐらいですが、私より小さくて百五十五センチ前後だと思います」
橋本弁護人=「押収地下足袋は九文七分と書いてありますね」
証人=「はい」
橋本弁護人=「加藤技師の足の大きさと対照資料にした押収地下足袋の大きさはどうでしたか」
証人=「つま先が余っているような状態ではないし、また、特に小さくては履けません。こはぜは上まで全部かかる状態の足で、大体ぴったりでした」
橋本弁護人=「あなたの鑑定書の中に、数値の違いが許容範囲の誤差であるということが随所にありますが、こういう断定をするには資料があるのですか」
証人=「データを取ったのがあるわけです」
橋本弁護人=「たとえば、同一足長の足跡であると断定する場合にはどの程度の誤差までが許されるのですか」
証人=「土の湿度とかいろいろによるので一概に何パーセントとは言えません。それから、駆け足の場合とか普通に歩いた場合とかで違ってきます」
橋本弁護人=「そうすると、基準があるわけではないのですか」
証人=「駆け足の場合はこのくらいだろう、歩いている場合はこのくらいだろうというあれはありますが、ここで一概に何パーセントとは言えません」
橋本弁護人=「普通に歩いた場合に足長の誤差はどうですか」
証人=「土質によっても違ってしまいます」
橋本弁護人=「現場の土を想定した場合はどうですか」
証人=「それが、早足とか遅足とか静止の状態とかでいろいろ違うと思います」
橋本弁護人=「普通に歩いた場合はどうですか」
証人=「普通に歩いた場合なら精々五パーセントぐらいでしょうね」
橋本弁護人=「駆け足の場合はどうですか」
証人=「二十パーセントは違って来ます。三十パーセントぐらいのときもあります」
橋本弁護人=「静止の場合はどうですか」
証人=「ほんの僅かでしょうね」
橋本弁護人=「誤差はほとんど認めないわけですか」
証人=「静止の場合はそうですね」
橋本弁護人=「その五パーセントとか二、三十パーセントというのはどういう根拠から導き出したのですか」
証人=「実験のデータによっています」
橋本弁護人=「その実験は誰がやったのですか」
証人=「私がやりました。この場合にやったわけではなく、前にそういうことを実験したのです」
橋本弁護人=「あなた自身がしたのですか」
証人=「はい」
橋本弁護人=「その実験の結果を文書、雑誌、そういうものに発表していますか」
証人=「していません」
橋本弁護人=「今、足長のことを聞きましたが、それ以外の数値についても実験により許容範囲を決めていますか」
証人=「足幅についてもあります」
橋本弁護人=「それから」
証人=「つま先に傷があった場合、泥が付着していた時と付着していない時と、早足の時と遅足の時と、いろいろによって傷の足跡に現われる状態がいろいろと違うと思うのですが、そういうことです」
橋本弁護人=「それについての基準が出来ているのですか」
証人=「それは作っていません」
橋本弁護人=「この鑑定書作成について関根さんと完全に意見が一致しましたか」
証人=「ええ」
橋本弁護人=「現に文章を書いたのは誰ですか」
証人=「関根技師です」
橋本弁護人=「鑑定について主従がありましたか」
証人=「主が関根です」
橋本弁護人=「あなたが従ですか」
証人=「そうです」
橋本弁護人=「共同の責任というわけではないのですか」
証人=「名前が載っているのですから結局共同責任です」
橋本弁護人=「職階の上では関根さんがあなたの上司になるのですか」
証人=「そうです」
(続く)
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○私は、狭山事件に関連する捜査資料の流出物は存在するのかという観点から、都内の古書店を探索したり、高円寺の西部古書会館で行なわれる古書市に出向いたりするが、やはりこのような特殊案件に対しては簡単に答えは出ないことを痛感する。が、そのような目的を持ち行動していると中々目的物と近しい古書と遭遇したり出来る。
たとえばこの古本である。
値段は五百円。
この古本には、率直に言ってそれなりに貴重な情報が散りばめられているのである。