アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 474

【公判調書1580丁〜】

                          「狭山事件の特質」

                                                                        中田直人

第二、被告人の主張

4.『被告人は一審でなぜ自白を維持したか。一言で言えば、長谷部ら取調官の「十年で出してやる」といったことを完全に信用したからである。もっともこの信用を崩さないためには拘置所も含めていくつかの工作が被告人に加えられた。「公判のときは数を勘定しておればよい」という教育部長がいたし、六法全書を見せて「十年位で出れるだろう」と話して聞かせた担当看守もいた。重大事犯として特別の関心を引いた被告人に対して、被告人の供述によれば、自白の要約調書のようなものが拘置区長によって与えられていたのである。だからこそ被告人は死刑判決を受けても少しも変わることがなかった。判決直前、弁護人から「死刑の判決がなされるであろう」と言われても、にこにこと笑っていたし、判決後は「お前、怖くないかい」と看守から不思議にさえ思われもした。運動で顔を合わせる人々からも「お前は死刑だぞ」と言われてもさらに動ぜず、区長に「俺は大丈夫だね」と面接をつけてみたのであり、区長から「東京へ行けば大丈夫だ。おれも嘆願書を出してやる」と言われ、教えられて控訴の手続きを取ったのである。

被告人の警察官に対する信頼に揺らぎが起こり、その気持ちに不安が生じたのは東京拘置所に来てからである。被告人は東京拘置所で、死刑にかかる重大事犯の人々と同じ房にいる。運動の時などこれらの人から「警察がいかに信用出来ないか、警察の約束などはウソである、十年で出られることはない、必ず死刑になる、弁護士とよく相談した方が良い」と繰り返し繰り返し言われたためである。それでも被告人は弁護士なんかに相談するものかという気持ちであった。この点について被告人は言う。「東京へ来てからも手紙がありました。頑張っていろと書いてありました。長谷部さんも遠藤さんも、関さんのは何通来たか判りませんけれども、長谷部さんからは二通位だったと思います。諏訪部さんからは金を一回送ってきただけです。手紙には約束のことは書いて無かったです。だから書いてやろうと思ったけどもね、だけど待っていました。そして、おれのところに古い人が居るからね、そういう人に聞いたら出す必要はない。そして裁判に直に言った方がいい、その人がね。それから弁護士さんに話した方がいいじゃないかと言ったからね。弁護士さんなんか話す必要ないと言った、おれ言ったね。そして裁判所に来て話したわけです」

それが当審第一回公判における被告人供述となったのである』   (続く)

*本文とは全く関係ないが、先日、冷蔵庫の奥から缶ビールを発掘する。が、賞味期限が一ヶ月ほど過ぎていた。昔、我が家に訪れた友人が、老生の知らぬ間に冷蔵庫から勝手にバドワイザーを取り出し一気飲みをキメていた。あぁ、それは五年前ほど前に購入した缶ビールではないか、と思う間もなく友人の顔色はみるみる青ざめ、彼はトイレに駆け込んだ。二時間後に姿を現した友人は頬がこけ、全く別人の人相となっていた。あのバドワイザー、数年は賞味期限を過ぎていたはずだが、今回発掘した缶ビールはまだ一ヶ月しか過ぎていない。よし、いってみよう。

・・・グラスに注ぎ数分待つと泡と液体が分かれ飲み頃である。口に含むと・・・おお、イケル。苦さと旨みが調和し、これはチーズか高級チョコレートが合うだろう、などとつぶやき、とりあえずは食品ロスを抑えることに成功する。