弁護人=「そこで作業されていて、①の方から南に向かって道を人が通るとすれば、容易に見れますでしょうか」 証人=「大体見えます。今の時期だと桑の葉が茂っていますから場所によっては見えないことはあるけれども、五月だとその当時は桑も少なかったし」 弁護人=「五月一日当時は見えたわけですか」 証人=「ええ」 弁護人=「当日、作業は雨が相当強くなるまでやられたわけでしょうか」 証人=「そうですねぇ、時間。よく記憶していないけど大体三時頃までは居たと思います」 弁護人=「その囲ってあるパラフィン紙を取るわけですね」 証人=「取るんじゃなくて、前の方を少し切って、かぼちゃの芯を引っ張り出すんですね。真っ直ぐ伸びるために」 弁護人=「そのパラフィン紙を切る作業は、その畑全部を当日作業しちゃってお帰りになったんでしょうか」 証人=「そこをやり切ってまた別の畑へ、やっぱりそれと同じ作業に行きました」 弁護人=「そこで作業されたている間に、この第一見取図の①から南に下がる道を、若い男の人と学生服を着た女学生のような女の子が通るのを見たことはありませんか」 証人=「全然ありませんね。この道にしてもこの道にしても、恐らく人は通らなかったと思いますね」 弁護人=「①から南下する道にしても⑫から南下する道にしても、人は通らなかったと思う」 証人=「ええ。で、仮にこの①の方の道を通ったにしても、ずっと屈んだ仕事ですからね、それに雨が降って来て急いでるんですから、常に方々見張っているわけじゃないし、別に気が付かなかったですね」 弁護人=「まあ見ていないということですね」 証人=「ええ」 弁護人=「一反歩の畑のかぼちゃのパラフィン紙を、芯が出るようにする作業は、大体普通だとどれくらいの時間がかかるわけですか」 証人=「二時間くらいかかるね」 弁護人=「雨が降っている時と降っていない時とは、どちらが長く時間がかかりますか」 証人=「まあ雨が降って来たんで、急いでるから時間は、あるいは幾らか短いかも知れないですけれども」弁護人=「作業をしにくい分けですね」 証人=「作業はずっとしにくくなる分けです」 弁護人=「その畑を引き揚げられる時に、どれ位の雨が降っておりましたか」 証人=「そうですねぇ」 弁護人=「かなり強かった」 証人=「ええ、かなり濡れる程度降っていましたね。当日畑へ出たのは一時頃ですけど、その時からもうぽつりぽつり降っていましたね」 弁護人=「そうするともう作業を始められる頃に、すでにぽつりぽつり」 証人=「そうなんです。雨が降りそうなんで急いで行ったんですから。それをしなければ伸びすぎて困るんで、もう降ることを予測して行ったわけですから」 弁護人=「そうするとやっぱり作業を全部仕上げなきゃ引き揚げられないわけですね」 証人=「ええ、そういうことです」 弁護人=「それからそこの作業を終えられて、今度は別の畑をやられたと言われましたけれども、別の畑というのは、やはり山学校の前の方の畑でしょうか」 証人=「それよりも少し東寄りの方ですね」 弁護人=「この図面でいくと東中学の南の方でしょうか」 証人=「もっとこっちに寄りますね。この道のこの次の道ですから」 弁護人=「東中学校より東南の方ですね」 証人=「この辺ですね」 弁護人=「東中学校の東南ですね」 証人=「ですから、これをこう戻ってこう行ったわけですね」 弁護人=「その別の畑へ行かれる時も、雨はかなり降っていたわけですか」 証人=「ええ、降っておりました」 弁護人=「車で行かれたわけですね」 証人=「そうですね」 弁護人=「⑫から南に下がる道に面した畑で作業をなさっていた時には、車はどこに置いておられましたでしょうか」 証人=「車はそうですねぇ、この私の畑の北側に、僅かに次の畑へ入るだけの道があるんですがね、で、ここで降りたと思います」 裁判長=「農道があるんですね」 証人=「そうなんです。この次の畑へ入る農道がここにあるんです」 裁判長=「次というのは、北側ね」 証人=「はい」 石田弁護人=「警察ではあなたの自宅やら、畑で働いている時などは畑へ、事件発生の間もなく頃、いろいろと聞き込みに来たわけですね」 証人=「はい」 (続く)
*老生は、世に出回る狭山事件本にさまざまな疑問を感じ、ならば原典である狭山事件公判調書に頼なければならず、それを遂行しているわけだが、今現在、その判断に間違いは無かったと確信している。多数出版された狭山事件関連本の半数は執筆者の主観による内容であり、この事件の本質を見極めるならば、やはり原典、原本にあたるしかその方法は無いと判断、実行に移している。過去に亀井トムの本など買ってしまったが、全く無益であった。