アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 221

「引用はあくまで原文のまま示さなければならない。引用部分と自分の文章とは明確にけじめをつけないと、他人の意見や報告をねじまげてしまい、ときにはとんだ迷惑をかけることになる。そしてカギの中は、あくまで忠実に原文に従わなければならない。極論すれば、用字の誤りまでもそのまま使うべきであろう。これは同時に、自分の文章に対して責任をもつことでもある」「カギで示す部分は、厳密に当人の語った通りでなければならない。カギにした上で妙な手を加えることは、当人への人権侵害や侮辱であるだけでなく、筆者がいかに無責任な人間かを暴露するものでもあろう」(『日本語の作文技術』本多勝一朝日文庫より引用。文中のカギとは「 」という符号を指す)    私は、狭山事件公判調書に基づき、裁判内容を理解するため、ブログをメモ帳代わりに考察してきたが、その過程において「引用」という方法を多用してきた。事実、調書を読みブログに謄写する作業は、記憶力が弱い私の弱点を大幅に補い、本来の目的である裁判内容の理解に役立っている。私は調書から引用する場合、その文章をカギ括弧で引用する形式をとっている。さらに、引用する文章は限りなく原文通りにと注意を払っている。ここで「限りなく」と表現したわけは、調書に散見される誤字・脱字の存在と句読点の不適切な打たれ方、そして印刷不良による判別不能、といった問題が関わってくるからである。まず、誤字についてであるが、それが確実に誤字であることが明らかであり、尚且つ正解である字が判明している場合、私は躊躇なく正解である字を選択し使用している。これによる、引用した文章への何らかの影響はないか何度も確認したが、今のところそれは認められない。むしろ問題なく読むことが出来、無用なストレスも感じなくて済む。次に脱字であるが、これは抜けている箇所を写真に撮りブログに添付し記録しておくことで済ませている。句読点の問題であるが、これに関して私は、本多勝一氏の言う「人権侵害や侮辱であるだけでなく、筆者がいかに無責任な人間かを暴露」に相当する。つまり句読点について、私はすでに打つ場所の「変更」や、打つ数の「追加」を行なっているからである。ここには実は裁判所書記官らの文章技術が関係してくるのであり、やや正確に言えば裁判所速記官の反訳能力、日本語をどの程度理解しているか、につながる。基本的に裁判所速記官は、証言など一つ一つの言葉を逐語的に記録する必要がある場合、裁判所書記官と一緒に立会い速記録を作る。裁判所速記官は証人の供述などを速記符号として記録し、法廷が終了した後で速記符号を反訳し、速記録を作成する。一連の流れを見ると、私が言う誤字・脱字、句読点の問題は、この裁判所速記官の速記時と反訳時に生まれたと考えられる。ただ句点だけは概ね正確な位置に打ってあり問題はない。文章の終りに「 。(マル・丸・句点・終止符)」を打つことは小学生でも理解している。問題なのは「 、 (テン・点・句切り点・読点・コンマ)」でありその打たれた位置が適切ではない事が、私が調書から引用する際、原文通りとはならない原因である。この時、私が文法にのっとり読点の位置を修正するからである。句読点を侮ってはいけなく、日本語の文章においては、句読点が修飾する側とされる側を分かち、結果読みやすい、分かり易い文章が出来上がるわけであるから、決して無視出来ない勘所なのである。狭山事件公判調書に載っている裁判所速記官の名前を見ると、どうやら複数人が交代で速記録を受け持つようで、上記に掲げた問題は、ある特定の速記官が担当した公判廷の記録に多発している。ただ、ここを追求しても無意味であるから無視するとして、この駄ブログに引用させていただいた狭山事件公判調書は、句読点の位置・数において原文通りでは無いことを、ここに明らかにする。私は狭山事件公判調書を、日本語の文章技術という角度からも目を通し、高学歴者で固められた司法の人々がどのような “文章 ” を書くのか、興味深く見ている。ところで、本多勝一著『日本語の作文技術』の続編とも言える『実戦・日本語の作文技術』には、「裁判の判決文を分析する(p.140)」という項目があり、その終盤で氏は次のように述べる。「〜しかしこの判決文は、文章技術以前のもっと大きな問題を孕んでいるようです。それは、いったいどうしてこんな文章を書いて平気でいるのかという根本的な疑問であります。書いた当人が、こんなものしか書けないことを心底から恥じて、法廷で赤面しながら判決文を読み、穴があったらはいりたい気持ちで退廷するとでもいうなら別です。それどころか、威張りくさってこの恥さらしの文章を読み、そのまま平然と退廷するのではないでしょうか。反省の気持ちなどカケラも感じていないのではありませんか。だからこそこういう前世紀の化石みたいな文章が、いまだに法曹界ではまかり通っていて、私なんかが『生まれて初めての悪文』と仰天することになると思うのです」……まさしくその通りであるが、超辛口ですなぁ。                                       
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( 私の参考書、二冊。何度も焼酎をこぼし、おでんを頬張りながら発射されたくしゃみを浴び、紙質は劣化、やや臭うが、まだ読める状態である。たまに「紙魚」と呼ばれる虫が顔を出してくる)