アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 220

狭山市田中に居住の老人、小川松五郎が被害品の腕時計を発見した時の模様を、飯野源治警察官は、小川松五郎が時計を「積極的に捜した」のではなく「何かあるかなあ」という程度の意識で発見に至ったと述べたのであるが、ここを弁護人は、より詳細に尋問を行なっていく。これは、小川松五郎老人が飯野源治警察官に語った話と、小島警部・見分者に語った話とが、やや齟齬を生じさせており、従って弁護人が事を明確にしておくためと思われる。そこで弁護人は、見分者・小島警部が作成した、実況見分調書に記載された小川松五郎による指示説明を取り上げる。「私は今日、大家の内田さんの畑の野廻り(注:1)の帰り途、午前十一時頃この辺の茶の根株の辺をよく見て歩きました。それというのは近所の溝呂木さんの婆さんから聞いたのだが、○○(被害者名)ちゃん殺しの犯人がこの辺に時計を捨てたので、刑事さんが来て捜していたという話を聞いていたからで、それでその辺を暇にあかして捜していると茶の木の根元に古い落葉があり、その中からチラッと光るものが目に止まりました。私はあれっと思ってその附近をよく見ると、腐ったビニールの袋がその手前にあったので、杖でそれを除けて奥の光るものを見ると女物腕時計であることがよく判りました」……以上を読み上げた弁護人に飯野源治警察官は「私はそれほど積極的に捜したという印象は持っておりません」と答える。弁護人が「今読んだような事を小川さんが本当に小島さんに話したとすると、あなたの聞いた事とかなり違った内容という事になりますね」との問いには「お説の通りです」と述べた。以下に続く尋問については次回で取り上げるとする。さて、殺人事件に関係する証拠品であるから、当該腕時計を重視する事は私でも理解できるが、まさか腕時計を発見した人間の「積極性」「偶然性」にまで踏み込むとは思いもよらなかった。さらに言えば、積極的であるか偶然であったかについて解明出来ても、それが腕時計にどういった影響を与えるのか、あるいは弁護人の、何かしらの伏線としての追及なのか、浅学菲才な私には想像もつかないのである。いや、だからこそこの先が楽しみだ、とも言えるが。                                                  

( “一切れのパン”という物語が好きであるが、本日の昼食はそれと決めていた。石窯焼のフランスパンと安ワインで舌鼓を打つ。極楽である)