狭山の黒い闇に触れる 113
お勝手に向かう小島警部。後ろに六造証人が続く。六造証人:「ここだと言うんです。それでお勝手の、つけがもい( 鴨居 : 筆者注)の上なんです。さっき二回目の捜索の時に、ボロきれを詰め直した場所です」中田弁護人:「そこを小島警部がここだと言って指差したんですか」六造証人:「そうです。で、手を上げようと思ったら、ちょっとカメラをあれするから待ってくれと言ったんです」中田弁護人:「そこには、ボロきれはあったんですか、前と同じに」六造証人:「はい」中田弁護人:「すると、取り出す前に、カメラで撮ると言ったのですか」六造証人:「ええ、撮りました。それで、多分ここにあるということで、取ってくれと言ったんです」中田弁護人:「あなた、どうしましたか」六造証人:「こんな所にあるわけない。この前見ていったんだから、と言ったらいや、一雄くんが図面までちゃんと書いてくれたんだから、ここにあると言うから、取ってくれというんです。そこで足袋とボロきれを取ったんです。そしたら一寸か一寸五分くらい入ったところにあったんです」中田弁護人:「あなたは、ボロきれと、足袋を出して手を入れてみたのですか」六造証人:「はい。手を入れるまでもないんですよ。とば口にあったんです。つけがもいは、柱が三寸ですから、やっぱり三寸なんです。その奥には外から来るしたみ( ? : 筆者注 )のあたりがあるんです。それで、奥には入らないんです」中田弁護人:「すると、ねずみの穴に行くまでもなく、すぐ手前のほうにあったわけですか」六造証人:「はい」・・・。私は839丁まで公判調書を読み進めた。二回目の家宅捜索において、この鴨居及び周辺は徹底捜索された。すると、この二回目の家宅捜索後から三回目の捜索までの間に、突如万年筆が鴨居上に現れたことになる。