【狭山事件公判調書第二審4346丁〜】
第七十五回公判調書(供述)
被告人=石川一雄
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青木弁護人=「何か、二十一年当時、風呂に入らなかった関係かな、シラミが湧(わ)いたことがあると、あんた言っていたけれども」
被告人=「ええ、ありました」
青木弁護人=「そういうこともあったの」
被告人=「ええ、二十一〜二年だと思います。戦争に負けてからすぐですから」
青木弁護人=「風呂が出来たのは二十五年」
被告人=「そうです。二十五年というか、五年頃です」
青木弁護人=「どういう風呂だったの」
被告人=「ドラム缶、まあ石川五右衛門風呂というか、ドラム缶を切って、板を乗せて、入る時私たち小ちゃかったから、ひっくり返って火傷したことあります。ドラム缶に◯(印字不鮮明)を浮かすんです」
青木弁護人=「井戸は」
被告人=「井戸は共同井戸で、石川◯二郎という自分の本家の共同井戸です」
青木弁護人=「井戸は何軒ぐらいで使うんですか」
被告人=「十二〜三軒くらいです」
青木弁護人=「共同井戸ですか」
被告人=「そうです。ぼく、書いてきたんですけどね」
青木弁護人=「いや、口で言って下さい」
被告人=「ああ、そうですか」
青木弁護人=「水道はなかったんですね」
被告人=「水道は勿論なかったです」
青木弁護人=「水道ができたのはいつ頃なの」
被告人=「水道ができたのは、三十五年頃からじゃななかったかと思います」
青木弁護人=「その共同井戸ね、これは水はどうだったのですか」
被告人=「水はほとんど出なかったです。しょっ中井戸堀りをしてて、出ない時は、白山神社といったですけど、あそこまで水汲みに行ったです。その仕事が自分たちの一日の仕事だったんです」
青木弁護人=「水が出なくなるというのはどういうわけ、皆で使うわけですか」
被告人=「いや、皆で使うからじゃない。あそこは高台だから出ないんです」
青木弁護人=「白山神社まで、あんたのうちからどのくらい距離があるの」
被告人=「そうですね、八百メートルくらいです。一キロまでなかったと思います」
青木弁護人=「そこへ子供の頃から、水汲みに行っておったんだね」
被告人=「ええ、そうです」
青木弁護人=「それで、菅原四丁目には、あんたのような家がほかにもあったのですか」
被告人=「ええ。前っ原……自分の家の近所を前っ原と呼ぶんですけど、前っ原はほとんど自分の家と同じような家だったです」
青木弁護人=「だいたい同じような家、だいたい一間の家で・・・・・・」
被告人=「そうですね。中でも、うちと、隣の水村、それから川本、それからもう一人石田、これが中でも悪かったです」
青木弁護人=「何軒ぐらい前っ原という所には家があったの」
被告人=「十三軒ですね」
青木弁護人=「さっきは十五軒と言ったが十三軒か」
被告人=「十三軒です」
青木弁護人=「それから道を置いてまた別の部落があったの」
被告人=「ええ、ありました」
青木弁護人=「そこは何て言うの」
被告人=「新宅とか」
青木弁護人=「新宅、それも菅原四丁目にはいるの」
被告人=「勿論、そうです」
青木弁護人=「すると、菅原四丁目には前っ原と新宅と二つ部落があったわけなの」
被告人=「いや、二つと割れてなかったですけど」
青木弁護人=「割れてないけれども、呼び名で言うと二つあったわけだね」
被告人=「はい、そうです」
青木弁護人=「新宅は、どのくらい戸数があったの」
被告人=「三十軒ぐらいだと思いますね」
青木弁護人=「やはり同じ程度の家なの」
被告人=「いや」
青木弁護人=「少しはましなの」
被告人=「ましだったですね。・・・・・・当時のやつ書いてきたんですが、これはのちに裁判所へ出すんですけれども」
青木弁護人=「供述を補充する意味で略図を提出したいのですが、検察官よろしいでしょうか」
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大槻検事=「それでは、この法廷で作成して名前を入れて、供述を補充するということで異議ありません」
青木弁護人=「それでは提出します(本速記録末尾添付本日付石川一雄作成名義の図面を提出する)」
(続く)


◯写真は提出された図面。