アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 407

【公判調書1416丁〜】証人=青木一夫(五十三才)・警察官(証人として出頭時は草加警察署長)

*問うのは中田主任弁護人(以下、弁護人と表記)

弁護人=「あなたが作成した被告人の供述調書で、現在までに裁判所に出ているものは六月十八日付から七月七日付までかなりの数があるわけですが、あなたの記憶によればその調書及び添付の図面全てについて謄本が存在しているのですか」

証人=「多分全部あると思います」

弁護人=「先程全部あるかどうか断言できないという様なことを言いましたね」

証人=「多分あると思いますけれども断言はできません」

弁護人=「あなたは最近その謄本を見た事がありますか」

証人=「あります」

弁護人=「いつですか」

証人=「つい最近です」

弁護人=「今月の十四日から後でしょう」

証人=「はい」

弁護人=「いつですか」

証人=「十五日です」

弁護人=「どこで見ましたか」

証人=「県警本部です」

弁護人=「十五日には、十四日の法廷で添付図面に何かが写っているところが問題になっているという事を知った上で見たのですね」

証人=「ただその図面について尋問があるということを承知しておりました」

弁護人=「(昭和三十八年六月二十一日付被告人の司法警察員青木一夫に対する供述調書=記録第七冊第二〇〇四丁以下添付の図面第二〇一一丁、第二〇一二丁を示す) 第二〇一一丁の図面の右肩の方に“第二”という字が書いてありますが、誰の字ですか」

証人=「私の字だと思います」

弁護人=「“第二”という字は、“第三表”というのの内“三”という字と“表”という字を消して“二”という字を書き加えたものですね」

証人=「はい」

弁護人=「訂正したのはあなたですか」

証人=「そう思います」

弁護人=「第二〇一二丁の図面には右肩の方に“第三”と書いてありますね」

証人=「はい」

弁護人=「ところが“表”という字は書いたのを消してありますね」

証人=「はい」

弁護人=「第二〇一一丁の図面も、第二〇一二丁の図面も、最初は“第三表”と書いてあったと思われるが、どうですか。それから“第二”の方には括弧が付いてますね」

証人=「はい」

弁護人=「第二〇一二丁の方には括弧が付いていませんね」

証人=「はい」

弁護人=「どうして“第三表”と“第三表”が二枚あるのですか。しかも括弧の付いているのと付いていないのとが」( 続く )

*眠気が吹き飛ぶような弁護人の尋問は迫力満点であるな。中田主任弁護人による鋭い追求は次回へ続く。

ところで老生は青春時代、大藪春彦を読んで育った。彼は執筆中、物語りの描写にリアリティを込める為、それが深夜であっても愛車であるスカイラインGT-Rを駆って、例えば都内の路地裏などに赴き、自分の目でその状況を確認し、その雰囲気などを作品に反映させたと聞く。

「血まみれの野獣」なる作品は、昭和43年に発生した府中三億円強奪事件の手本にされたのではないかと、当時騒がれた。この作品が発表された後に事件は発生している。作品と、現実に起きた事件との類似性について、ここでは触れないでおこう。

久しぶりにこの作品を読み、とある場面を検証してみたくなった。現在一千万円ほどする大藪春彦愛用のスカイラインGT-Rと同型車を買うことは無理であり、田舎の貧乏人らしく西武鉄道で現場へ向かった・・・。

ここは東京競馬場である。この、無駄に巨大な博打用建築物を建設し、維持するその裏にはどれほどの人々が犠牲に晒されたのか、もしかするとここの土台には競馬地獄へ落ちていった人々の骨が利用されてかもわからんな。

これより行う検証は、「血まみれの野獣」の主人公が競馬場を爆破するため爆薬を仕掛けるのだが、その場所の特定及び確認である。

場内にある、内馬場へ通ずるトンネルに入る。向こうに見える緑色の芝コースが爆破する標的となっている。

トンネル内。この真上を芝コースが走る。作品の主人公、鶴田敏夫は深夜ここに現れ、トンネル上部に設置された蛍光灯内に爆薬を仕掛ける。爆薬はカーリット爆薬一キロ。これに電気雷管、リモート・コントロール撃発装置を組み合わせている・・・。

検証を終え、老生は充実感で満たされた。無駄な行動がとても心地良い。さて馬券でも買うとするか。