弁護人=「あなたが石田さんのうちに居て、残飯を取りに行っていた頃のことですが、自衛隊の所へ行って来方が早いとか遅いとか言われたことがありますか」被告人=「あります。怒られたことがあります。それは最初の頃だったと思います。残飯を早く取りに行ったら、偉い人に怒られたです」 弁護人=「何て、怒られたの」 被告人=「残飯取りに来るのが早いって」 弁護人=「まだ出てないのに、早過ぎるというんですか」 被告人=「そうです」 弁護人=「その時は、出るまで待っていたのですか」被告人=「そうです」 弁護人=「あなたが居る間に、いつもの時間より早く取りに来るようにと、自衛隊のほうから言って来たことはありませんか」 被告人=「あったかも知れません。はっきり、それは判りません」 弁護人=「五月一日の日にあなたが見た時間は、あなたが居た時のことから考えれば、土曜日、日曜、祭日にあたる時間だったということなんですね」 被告人=「そうです」 弁護人=「それであなたとすれば、不思議に思ったというわけですね」 被告人=「はい」 弁護人=「これは、あなたに聞いたのか、石田義男さんに聞いたのか、ちょっと忘れましたが、黄色いドラム缶を持って行くという話がありましたね」 被告人=「はい」 弁護人=「その黄色いドラム缶には、残飯じゃなく捨てるものを持って来るんですか」 被告人=「はい、縄とか、それから果物の皮などを入れてきます」 弁護人=「それは自衛隊のほうから捨てろと言われて持って来るんですか」 被告人=「はい、向こうで区別してあるんです」 弁護人=「さっき、残飯を集める場所が三ヶ所とか、五ヶ所とかいう話がありましたね」 被告人=「はい」 弁護人=「駅の前の稲荷山公園の第二門という門がありますね」 被告人=「はい」 弁護人=「その第二門から入って、左側ほうへずっと行って、西武線を渡って三十メートル位行くと、右手に食堂がありますね」 被告人=「左手だと思います」 弁護人=「ともかく、西武線を渡ってちょっと行った所に食堂がありますね」 被告人=「はい」 弁護人=「その場所から持って来るわけですか」 被告人=「はい」 弁護人=「さっき言った、縄とかいった屑の類ですね。それは、その食堂からも出るんですか」 被告人=「出ないです」 弁護人=「と、別の残飯を取る所から持って来るわけですね」 被告人=「はい」 ・・・続く。
写真は“劇画 差別が奪った青春・解放出版社”より引用