裁判長=「残飯を取りに業者が来るのは朝、昼、晩と三回ですか」 証人=「はい」 中田弁護人=「石田さんの家の人がね、車にドラム缶を持って残飯をあげに来ているところを直接ご覧になったことありますか」 証人=「あります」 中田弁護人=「それは三十八年五月以前にもありますか」 証人=「あります」 中田弁護人=「その車に積んで来るドラム缶の中に、黄色い缶があったのを憶えておられますか」 証人=「黄色いのがありました」 中田弁護人=「憶えておられますね」 証人=「はい、通常、アッシュ缶と言いまして、米軍等で灰を入れるのに使っている缶なんです」 中田弁護人=「アッシュ缶」 証人=「はい、スペルはちょっと分かりませんが」 裁判長=「それは、外国語ですか」 証人=「そうです」 中田弁護人=「中田○○(被害者名)さんという人が殺された事件はご存知ですね」 証人=「知っております」 中田弁護人=「その殺されたと考えられるのが、昭和三十八年の五月一日という日なんですがね。特定の日を限って伺っても、あるいはご記憶が無いかも分かりませんけれども、昭和三十八年の五月一日の夕食の残飯について、通常取りに来る時間よりは、早かったとか遅かったといった点については記憶はありませんか」 証人=「全然ありません。直接私が立ち合って検量しているわけではありませんから分かりません」 中田弁護人=「今年のことを伺ってみますがね、五月一日というと、丁度ゴールデンウィークにあたりますね。真ん中ですね」 証人=「はい」 中田弁護人=「そういう時に、休日がかなり続きますが、食事時間が、特に繰り下がったり繰り上がったりすることはありませんか」 証人=「ございません」 中田弁護人=「今年は無かったわけですね」 証人=「はい」 宇津弁護人=「食事の時間は伺ったわけですけれども、朝、昼、晩の残飯あげの時間が食事時間の後ですね、何時から何時までの間に済ませるようにという指示はあるんですか、ないんですか」 証人=「はっきりした指示はやっておりません。任意に任しております」 宇津弁護人=「そうすると、例えばお昼の残飯あげをかなり遅くなってから“あげ”に来るという場合なんかも有りましたでしょう」 証人=「それは有りました」 宇津弁護人=「あなたの知る範囲で、お昼の残飯あげが遅くなった場合、どのくらいですか」 証人=「二時頃取りに来られた場合もあります」 宇津弁護人=「二時頃というのは、あなたの記憶では一番遅いほうですか」 証人=「私では遅いほうに感じます。通常一時頃取りに来るのが、一時間遅れるというのは遅いという感じを受けます」 宇津弁護人=「念のためにお尋ねしますが、三十八年五月一日の昼食の時間が繰り下がったかどうかという記憶はどうですか」 証人=「分かりません」 昭和四十三年九月二十六日 東京高等裁判所第四刑事部 裁判所速記官 佐藤房未
写真は「劇画・差別が奪った青春・解放出版社」より引用。新聞記者が石田養豚場の関係者を撮影する場面が描かれている。ドラム缶を積んだトラックのフロントにトヨエースの文字が確認出来る。事実に基づく表現かどうか、私には判断出来ない・・・。
車種がトヨエースか何か分からぬが、とにかく石田養豚場で使用する小型トラックがここらを走り抜ける様を石川被告人が目撃したとされている。