雨音で朝四時に目が覚める。かい人21面相と膝を交えて歓談中、という夢の最中だったのに。戸棚から干からびたサラミソーセージ、乾いたパンを取り出し、熱いコーヒーと共に早めの朝食をとった。ふと、近くの雑木林から聞こえる、鳩の鳴き声が耳にとまる。 「ホオッホ、ホーホー。ホオッホ、ホーホー」。途中で音程が変化したり、突如鳴き声のパターンが変化したりするが、日本人ならば、いつかどこかで聞き慣れた、もはや環境音のひとつと言って良いだろう。私はしばし「なごむなぁ〜」とヨダレを垂らし煙草を吸っていたが、鳴き声パターンが理解出来た瞬間、「これは緊急事態ではないかっ」と四つん這いになる。激しく尾を振り「コレは暗号だ!」と御近所に吠えた。
(獄中の昭和史 豊多摩刑務所 青木書店より転載)
日頃から元CIA職員スノーデン氏とテレパシー交信を重ねる、という妄想の甲斐がここで実ってきた。高円寺西部古書会館で入手した古本に解読ヒントが隠されている事に気づいた私は、鳩から発せられる暗号音を便所紙にメモっていった・・・。一時間後、解読を終えた私は包丁を研いでいた。解読結果はというと・・
「川越水上公園へパンの耳を持ってこい」と、コイツから鳩を経由した伝言であった。