アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1442

    事件発生から一年後の昭和五十七年十二月二十三日、深川通り魔殺人事件の被告人=川俣軍司に判決が言い渡された。場所は東京地方裁判所七〇一号法廷である。

    「主文。被告人を無期懲役に処する。押収してある柳刃包丁一丁(昭和五十六年甲第一六四四号)を没収する」

    判決は求刑どおりゆえに、検察側は控訴理由がないのであった。

    ここからは、さらに『電波』という語句に焦点を当て抜粋してみる。

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                                   当裁判所の判断

(一)石塚真理の検察官、司法警察員に対する調書、その他の関係証拠によれば、被告人は『萬來』に立てこもった際、同女にその場にあった紙片に要求書を書かせている。書面には、「電波でひっついている役人の家族をすぐ連れて来い。すし屋の夫婦を全員連れて来い。オレがこういうことをしたのも、みんなひっついている役人が悪いからだ。人が死んだのも役人とグルになってオレをひっついたすし屋と水産屋が悪いんだ。それの責任だ」という記載がある。

    また関係証拠によれば、被告人は石塚真理および室外の警察官に対し、「親兄弟などみんなでグルになってオレを邪魔にしてきた。陰口もたたいてきた。我慢に我慢を重ねてきたがここでケジメをつけるんだ。人が死んだのもグルになった者の責任だ。こういうことが大ぴらになればあいつらは店をやっていられない。店をつぶしてやる。オレの言うことをニュースでやらせろ。テレビに流れるマイクを用意しろ」などと言ったことが認められる。

(二)押収してある封書一通その他の関係証拠によれば、被告人は犯行当日の二十日前の、昭和五十六年五月二十五日ごろ、銚子市の兄のもとへ赴き、自筆の手紙を手渡している。

    また関係証拠によれば、被告人は府中刑務所を出た昭和五十六年四月二十一日に兄に電話をかけて、「今回の懲役ほど苦労したことはなかった。親兄弟までグルになって自分をいじめるとは思わなかった。自分は麻酔を射たれて殺される。舌を噛んで死んでやる。それでも平気か」などと言った事実が認められる。

(三)被告人は捜査段階において、高級役人が黒幕になって心理学者を使い、被告人の頭に電波を飛ばしたり、テープに録音された声を流してきたうえ、勤め先の従業員、雇い主、親兄弟にまで圧力をかけて悪口を言わせたり、計画的に解雇させてきたと供述している。また本件犯行におよんだ理由としては、府中刑務所を出所してから、板前として立派な仕事をして、立派な家庭を持とうと考えていたものの、黒幕が店の経営者等に圧力をかけて次々に解雇させ、ついにどこにも就職出来ない状態にさせられたため、女子供を殺して人質を取って立てこもり、すし屋の経営者等を呼びつけて黒幕が誰なのか白状させたうえ、黒幕を呼び出して対決し、黒幕や、すし屋の経営者等に責任を取らせようとしたと供述している。

    被告人のこれらの供述は、前記(一)に列記した犯行当時の言動を示す客観証拠と、よく符合しているばかりでなく、前記(二)に列記した手紙や電話の内容とも連続性があり、犯行当時の心理状態を正確に表現しているものと考えられる。

(四)このように見てくると、精神病理学上の意味づけや、どの程度精神に影響したかは後に見るとして、前記の各証拠にみられるような幻覚妄想に悩まされ、供述に表れているような心理状態のもとに本件犯行におよんだことは、動かし難い事実であるといわなければならない。

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    ◯冒頭に載せた写真を見るとき、白のブリーフとハイソックス姿につい、プッと吹き出してしまう老生は不謹慎極まりなく、被害者に対する配慮が欠け、且つ節度が足りないことは明らかである。だが、当時この事件がテレビで報道されたとき、買い物を終え帰宅したお袋がテレビ画面に映るブリーフ姿の軍司を見るなり、「あらやだ、プッ」と吹いていた事実を振り返ると、この反応は単なる親子間の遺伝等とは関係なく、誰しもが同じ感覚にとらわれたのではないかと推察するのである。

    これほどの兇行を犯した犯人を捕まえてみれば、その姿は白色ブリーフに同色のハイソックス着用という、白を基調とした清廉潔白な装いをまとい、なるほど、では犯人はさすがに反省の表情であるだろうかとその表情をたどると、そこにはこの程度の殺戮では納得がいかぬと言わんばかりの憤怒に満ちた顔が確認されるのである。白色ブリーフ・ハイソックスと、憤怒の形相とのアンバランスな組合せは、見事に川俣軍司の狂気を表わしてはいないだろうかと、そんなことを鼻のあたりにピリピリとひっつく電波を手で払いながら、老生は思っていたのであった。