【脅迫状の謎】④


本件脅迫状は、封筒の『少時様』 との宛名からみて、脅迫の対象となった人物は本来『少時』という姓の者であったと思われる。文面から対象者の要点を抽出すれば「少時という人物の家族には子供と女の人がおり、家の前には門がある」となる。脅迫文の末尾にある『金を取りに行って、違う人がいたら子供は殺す』との記述から、犯人は少時方の「女の人」を知る者であった可能性が高い。
ところで、この脅迫状はやがて一部が書き直され、本件被害者の父=中田栄作宛の脅迫状へと代用される。書き直された箇所は、封筒の宛名が「少時様」から「中田江さく」へ、脅迫文においては日付と場所が変更されている。
封筒の宛名変更は不可欠なことと理解できるが、脅迫文に目を移すと、日付と場所を書き直しただけで、中田家への脅迫状として十分転用できている点は何とも異様で不思議である。
脅迫文の最上段に書かれた『このかみ(紙)にツツ(包)んでこい』との記述は、つまり犯人が身の代金を脅迫状で包み受け取ることを意味し、金と共に脅迫状という証拠物をも回収しようとの、よく考え練られた手段と言え、犯人の知能の高さが窺われる。